ブルー・エプロンは新規顧客の獲得に苦労したと言われているが、アマゾンはその点で問題ない。近年の企業買収もあり、アマゾンの競争力は増している。
スーパーマーケットチェーンのホールフーズ・マーケット買収により全くの新市場に参入した同社は、裕福で健康志向なホールフーズの顧客を自社の顧客層に取り込むことも可能になった。
多くの「アマゾン・プライム」会員に加え、新たな食材宅配サービスの見込み客も増え、商品はホールフーズから配送することで物流の問題も解消される。
発明はせず、簡略化する
アマゾンの戦略は、全てを発明することではなく、大幅な簡略化にある。
例えば、同社で急成長中の大規模事業で、年間売り上げが100億ドル(約1兆1200億円)を超えるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)。ウェブホスティングそのものを発明したわけではないが、改良を加え、より簡単に使えるようにした。セルフサービス機能により、企業はインターネット上で簡単に規模の拡大・縮小が可能だ。
アマゾンには「invent and simplify(発明し、簡略化する)」という社内理念があり、全従業員が問題解決者となることが求められている。
破壊の機が熟した米食品業界
食材キット宅配はアマゾンにとって大きな勝利となるかもしれない。通勤・勤務時間が長くなり、同僚やロボットとの競争を強いられる中、人は今まで以上に仕事に打ち込んでいる。
私が10代の時、交換留学生とドイツで一夏を過ごしたことがある。その時、その家庭の父親が昼食を食べるために帰宅したのを見て、驚いてしまった。米国での状況は全く逆で、食事の支度にはほとんど時間をかけない。
食材準備サービスを提供する企業の狙いは、まさにこれにある。人々は自炊したいものの、献立作りや買い出しはしたくない。そして結局、多くの人がファストフードに走ってしまう。
ファストフードにより米国人の腹はたるみ、健康がますます損なわれている。健康志向のファストフードもあるが、自宅で調理した食事とはやはり違う。