この現状に危機感を抱いた盛山氏ら国会議員たちが、議員立法で成立させた法律が『真珠の振興に関する法律』(真珠振興法)である。昨年の真珠の日に満場一致で可決された。真珠振興法は、真珠産業と真珠関連の宝飾文化の振興を目的としており、農林水産大臣と経済産業大臣が定める基本方針に沿って施策を講じていくものとされている。この基本方針が間もなく実施に移される。
内容は、真珠の需要の長期見通しや生産量目標、生産者の生産基盤整備、生産性・品質向上、漁場に関する事項、流通高度化、輸出振興から研究開発、人材育成までカバーしている。海外展開の方途として「ブランド力を生かしたクールジャパン政策の活用」まで謳っている。
このような日本政府の対応については、地場産業である真珠振興には国が旗を振るよりも、各地の民間関係者の自主的努力のほうが大切だ、と指摘する向きもある。正論だろう。
ゴールデンウィークの最中、北京では中国社会科学院設立40周年記念シンポジウムが開かれていた。テーマは、「持続的地球社会の構築」だ。水質汚染の防止改善が論題の一つである。晩餐会でも水産物と水質維持という話題が持ち上がったので、私は日本の真珠振興法を紹介してみた。中国の学者が直ちに反応する。「民間活力が源であることは間違いない。でも政府のリードなしに政策課題を解決できる国は世界中にない。米国だってそうでしょう」。
この日の北京は外出も困難な猛烈な黄砂に見舞われていた。政府のリーダーシップを強調する中国人学者の発言が、奇妙に説得力を持って耳に響いた。