しかし近年、貴州茅台の業績は力強い復活を遂げ、時価総額は今年5月時点で715億ドル(約8兆1000億円)と、ジョニーウォーカーを保有するディアジオ(Diageo)の712億ドル(5月時点)を上回り、アルコール飲料メーカーとして世界最大となった。
反腐敗運動は収まっていないが、アナリストによると監視体制はかなり緩み、同時に茅台人気のすそ野が広がっていることで、記録的な売り上げを計上したという。茅台の1本あたりの価格は、以前は約2000元(約3万3000円)だったが、最近は約1150元(約1万9000円)に下がっている。
上海のコンサルティング会社China Market Research Groupのディレクター、ベン・キャベンダーは「反腐敗運動から3年が経ち、取り締まりは以前ほど厳しくなくなった。国有企業や政府機関へのチェックは続いているが、昔ほどではない」と語った。
庶民に人気の白酒の高級ラインに位置付けられ、「国酒」と呼ばれる茅台は、中国の若者の間でも人気が高まっている。この数年、供給を減らし、価格を安定させ、人気テレビ番組やスポーツの試合のスポンサーになるなど、マーケティングキャンペーンにも投資を続けた。その結果、都市の高所得者層が飲み会や家族との夕食に茅台を購入するようになってきた。
これらの努力が実を結び、貴州茅台酒の2016年の売上高は前年比19%増の400億元(約6700億円)となった。ブルームバーグの報道によると、そのうち政府による消費は、かつての50%から一桁台まで下がっている。
マーケットの明るい見通しにけん引され、上海に本社を置く貴州茅台の株価はこの1年で60%以上も上昇した。ミンテルのアナリスト、リー・レイは、白酒の消費は2021年まで年7.9%のペースで伸び、市場規模は7590億元(約1兆2700億円)に達すると予測する。
リーは「今後、高級白酒の需要は個人が支えていくだろう」と語った。
キャベンダー氏によると、茅台の勢いは今後1~2年は続くだろうが、息の長い成長のためには顧客ベースを多様化する必要がある。中国経済の成長の減速が消費の力を弱め、国内マーケットが飽和に近づいているからだ。
貴州茅台酒の売り上げの95%は中国内で生み出されているのに対し、ディアジオは6月末締めの前会計年度の売上の90%を欧州と北米で稼いでいる。CBSのアンカー、ダン・ラザーは1970年代に、茅台を飲んだ感想を「刃物を飲んでいるようだ」と表現した。
「マオタイの味は独特で、必ずしも不味くはないが、海外の人にとってなじみのあるものではない」とキャベンダーは述べた。