イケアとスポティファイの国が生んだ新スター「ボルボS90」

写真=ボルボ・カーズ・ジャパン

今月開催されたG20では、フランスのマクロン大統領が2030年までに、ガソリン・ディーゼルの新車の発売を禁止すると明言した。同じ方針を表明する国も少なくない。

そんな中で、自動車業界に衝撃を与えたのが、スウェーデンのブランド、ボルボだ。同社は、2019年から生産するすべての車種を、ハイブリッドか完全な電気自動車にすると発表した。自社のラインナップのすべてを電気化すると宣言したのは、世界で初めてだ。
 
でも、僕は驚かなかった。なぜなら、同社は今、大変革のまっ只中にあるからだ。スウェーデンを象徴するボルボは、今や中国のジーリーホールディングス傘下にあるが、 長い間安全第一主義のメーカーとして信頼されてきた。3点式シートベルトを発明して市販車に真っ先に搭載したのもボルボだった。

しかし、デザインにおいてはあまり魅力的とは思われてこなかったのも事実だ。“車輪のついたレンガ”とさえ言われていた時代もあった。
 
ところが、今やダイナミックな運転性能と美しいデザイン、高級感においてどのメーカーにも劣らない。しかも、競争力のある価格で、不動のドイツ・ビッグ3、メルセデス、BMW、アウディを脅かす存在になってきた。

S90の第一印象は上々だった。スタイリッシュで品がある反面、かなり大きいが、デザイン部は、うまい具合にレトロなタッチとモダンな匂いをブレンドさせている。バランスのいいプロポーションを持つセダン(ワゴンもある)は、近年のボルボでもっとも美しいと言えるだろう。

T字モチーフのヘッドライトは、北欧神話のトール神が持つ槌を思わせ、北欧の伝統を感じさせる。独特なメッキのグリルは、1960年代の人気テレビシリーズ「ザ・セイント」でロジャー・ムーアが乗り回していたP1800クーペへのオマージュも思わせる。
 
XC90とプラットフォームをほぼ共有するS90は、XC90より小さいながら20インチのタイヤを履いている。でも正直なところ、20インチの設定では乗り心地は固めというか、少しゴツゴツする。以前「なぜ男性はいつもインチアップしたいのか」と妻に聞かれたことがあり、「女性はいつも、より大きなダイヤが欲しいでしょう」と答えると彼女は納得したが、S90の場合はインチを下げた19インチにした方が、乗り味がより高級車らしくなる。
 
さらに、XC90の2リッターのスーパーチャージ&ターボ・エンジンI-4と、8速オートマチック、AWDも汎用。S90の小さくも強力なエンジンは320psを発揮する。0-100km/hの加速は5.6秒と充分速い。1820kgも車重があるのに、重さを感じさせない。

クルマの動きはとにかくなめらか。これはスポーツセダンではなく、長距離クルージングにぴったりの高級車だ。ステアリングの重さと手応えがちょうどよく、狙ったラインを綺麗にトレースしてくれる。サスペンションは2類用意されている。エア・サスペンションは乗り心地が良いが、標準仕様のダブル・ウィッシュボーン&リーフスプリングの方が、路面からのフィードバックをダイレクトに感じることができる。
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文=ピーター・ライオン

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