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2017.07.18

実は日本人よりこだわりが強い、欧米人の「美白」意識

puhhha / Shutterstock.com


そもそも大袈裟にも見えるあの白さの由来は、芸術的感覚というより室内の暗さだとも言われる。昔は室内が暗く、特にに夜はろうそくしかないために限りなく暗い。多少なりとも白いメイクでないと、かわいい仕草や表情も相手に伝わらず、一般の女性との違いも宴席で表現できなかった。目の大きい宝塚メイクの感覚と一緒である。

また、日本に残る昔の西洋屋敷を見学すると、自分の目線以上の高さに鏡が多いことに気がつく。これは、天井から吊るされているろうそくのシャンデリアや初期の照明を、鏡で反射させて部屋全体を明るく見せる工夫だった。

写真撮影にも関係している。幕末の写真は、浅黒い肌の武士が写っていることが多い。当時は国民全体が日焼けしており、それが写真でも正確に表現されているのだ。美しい女性も写真になってしまうと、浅黒く苦労の表情が写ってしまう。これを回避して、できるだけ可愛く写真に写りたいと思った女心が、白粉であり美白ではないだろうか。今でいう画像加工アプリと同じなのである。
 
ところで美白は世界でも流行っているのだろうか。いわゆる日焼け止めでUV対策できるような日差しの量ではないアフリカ大陸はどうだろう。

日本だけではなく、欧米でも中近東でも、地中海でもアフリカでも、白は重宝され、高貴な色、尊い儀式の色という扱いが多い。清廉の象徴、真実の象徴が白である。汚れていない清潔さは白であり、汚れが落ちた清らかさも美容業界でのクレンジングの「美白」と同じ白色概念である。

白は高貴でオシャレ。白のスーツ、白色のビキニなど、男女ともにオシャレで格好いい人でないと普通は着こなせないファッションだ。

「ソワレブランシュ」というパリ発祥のオシャレなイベントがある。全身白い洋服でドレスアップした100人くらいが一堂に集まり食事をする会だが、ハイファッションのイメージになるのは白の持つ特殊性かもしれない。自然界には広い面積で存在しにくいものが「白さ」であり、それがたくさん集まった姿が特別に見えてしまうらしい。
 
美白と白の話の締めくくりに、歴史の面白さに触れてみたい。実は、“美白”の原点も太陽だった。紀元前何世紀も前のエジプトで、布地を太陽にさらして脱色し、白色にしたのが白さの原点と言われている。神である太陽の恵みをいっぱい受けると白くなる。尊い白い布地ができる。高貴で美しい白色の生地が完成する─。

太陽光線を浴びて日焼けした高貴な白の布地を手に入れた人間が、数千年たって太陽を避けながら白さを追求しているのが、人間社会の面白さかもしれない。もしかしたら人間も太陽を浴び続けると白くなるのかな。

文=朝吹大

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