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2017.07.18

実は日本人よりこだわりが強い、欧米人の「美白」意識

puhhha / Shutterstock.com

夏の海辺に漂うココナッツの甘い香りは、はるか昔の情景となり、中年の思い出のみに存在する。前回のUVの話の延長として、日本の夏のキーワード、「美白」について考えたい。

もはや季節ものではなく、美白は1年を通して美容全体のキーワードになっており、エステサロンの経営主軸はダイエットと美白になってきている。
 
先日、ある美容業界の友人から「美白は日本独特の美容じゃないかな。東洋人だから美白好きなのかも」という言葉を聞いた。美白とは果たして、日本に限ったキーワードなのだろうか。
 
美容でいう美白の前提条件には、UV対策という意識が存在している。UV対策が広がった結果、美白が人気トピックになっているのだ。日光浴が皮膚ガンなど皮膚の病気の原因になるなんて議論がなければ、もしかしたら日焼けは今以上に歓迎されていたのではないか。

日光浴をどんなに過激に行っても「健康にいい」「若くなる」となれば、今頃は日焼けサロンも大人気ビジネスで、厚労大臣自ら日焼けしているだろう。残念ながら日焼けし過ぎがカラダに良くないという現代医科学による正しい回答が、美白市場を伸ばしている。しかし、UV対策=美白だけでは、美白関連ビジネスや美容ビジネスも大きくならない。

日本人はどのような意味で、白さが好きなのだろうか。実は、欧米のような白色人種が多いところでも美白は人気ワードである。色素沈着が少なく日焼けしにくい白人種での場合は、UV対策より、どちらかというと美白を若さの象徴としている。透きとおるような肌が若さのイメージであり、若葉の透明感や瑞々しさを美白のイメージにオーバーラップさせているのだ。

肌にとどまらず欧米では歯の美白(ホワイトニング)も美容文化であり、金髪もまた、美白作業の一つである。金髪の欧米人女性の多くは元は茶色系の髪色だったりするが、脱色して金髪にする。白髪においても、綺麗にみえるように黄色成分を脱色して綺麗な白髪にしている。

こと白さに関していえば、実は意外にも、欧米人は日本人にも増して関心が高いのだ。例えば「白いシャツ」の色表記が「白」と記載されていても日本では誰も気に留めないが、欧米では「white」だけでなく「shimmer white」「eggshell」「snow white」「off white」「cool white」「milk」など日常での表現が多様で、自分の肌の白さにあった「白」を気にしながら文化を深めている。

シャツの生地だけではなく、壁紙の色や、ホームセンターの白ペンキの色段階の豊富さには驚くだろう。色ってこんなにあるんだなあ、なんて感心してしまう。
 
道が逸れた。美容ビジネスの白に話を戻そう。

日本における美白の原点は、いわゆる白粉である。京都の舞妓さんがしているあの化粧である。歌舞伎世界でも使われているので親しみがあるだろう。明治時代までは鉛が入った白い粉が主流だったので、顔に白粉をつけると逆に鉛害で肌が荒れる難物だった。肌荒れどころか、健康も害したので政府が鉛使用を禁止し、女性も健康になったのが明治の終わりの美白だった。
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文=朝吹大

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