各国の家族経営の企業217社の幹部336人を対象に実施した調査の結果によると、「家族間の調和を維持することが社内の優先課題だ」と回答した人は約65%だった。一方、調査対象とした企業の約90%が、大きな問題といえる「悪い種」の存在を明らかにした。
「悪い種」というのはどのような人物を指すのだろうか?コンサルティング会社の米ゲルトルード・アンド・カンパニーによれば、「悪い種」とは「家族や会社に迷惑をかけているにもかかわらず、事業を個人的な利益のために不当に利用する家族の一員であり、大抵の場合は経営者の子ども」だという。
こうした子どもたち大半の場合、隠れてそうした行動を取る。そして、何が起きているか気付いたとしても、他の家族はほとんど厳しく追及しない。問題について徹底的に議論しようとすれば、事業に深刻な悪影響が及ぶ可能性が高いからだ。
富裕層向けの財務顧問サービスや個人資産管理の支援などを行うBSWインナー・サークルの創業者ジョン・ボーエンは、「家族が支え合い、建設的に協力し合うことは、誰もが望むことだ。だが、悪い種が混ざっているときにはそれは不可能だ。悪い種は自己完結的で、そして自分には(好きなようにする)権利があると考えている」と話す。
「彼らは自分の知識や能力が低水準であるにもかかわらず、その家族の一員であるというだけで、常に特別扱いされることを期待する。その結果、事業に損害を与えるような行動を取る」
「こうした状況を特に複雑にするのは、大半の家族がこうした破壊的で高圧的な悪い種をなかなか抑制できないことだ」
こうした問題への効果的な対処は非常に難しい。米法律事務所MDM&Cのパートナーである法人顧問弁護士は、「悪い種が企業にもたらす金銭的・社会的な悪影響をさまざまな方法で評価し、それによって情報を得ることが非常に重要だ。特に、(経営者である親が自分の子である)悪い種の行動が自社に及ぼす破壊的な影響の大きさについて認識していない場合には、極めて重要だ」と述べている。
そうした情報に基づき、専門家の助けも得ながら「悪い種」を排除する、または問題の影響を軽減するための対策を講じることが必要だという。
家族経営の企業にとって、その中核となる強みは大半の場合、「家族」そのものだ。だが、家族の絆が企業の成功や家族間の調和に害を及ぼしているケースもある。「悪い種」への対応は痛みを伴うものになることが多い。だが、うまく対応することができなければ、事業も家族も同様に、長期にわたり苦しみ続けることになる。