トランプの唯一無二の盟友、フィル・ラフィンという男

トランプとラフィンは25年来の友人。2008年にラフィンが47歳年下の元ミス・ウクライナ、オレクサンドラと結婚した際、トランプがベストマンを務めた。


さらに1994年、保有するすべてのガソリンスタンドをフランスの石油大手トタルに5000万ドルでリースし、その契約をもとに借り入れた2000万ドルでバハマのカジノを買収。10年後に売却した際の金額は1億4700万ドルだった。
 
カジノにほれ込んだラフィンは98年にラスベガスをめざし、1億6500万ドルでフロンティア・ホテルを買収。9年後、イスラエルの投資会社にその7倍の値段で売却した。
 
ラフィンのツキはそこで終わらなかった。売却の1年後にアメリカ経済が急降下し、130億ドル以上の負債を抱えた娯楽大手MGMから7億7500万ドルでトレジャー・アイランド・カジノを買収したのだ。

5億ドルの借金とガラ空きのビル
 
ラフィンとトランプが初めて手を組んだのは2005年、ラフィンがフロンティア・ホテルの裏に所有している敷地に、対等出資でコンドミニアム・ホテルを建てたときのことだ。
 
ところが、正式オープンを迎えた08年に金融危機が勃発。ほぼ売約済みだった1283戸のうち、300戸を残してすべての買い手が撤退した。ラフィンとトランプは、5億ドル以上の負債とガラ空きのビルを抱えることになった。
 
弁護士には破産申し立てを勧められたものの、ラフィンによれば、トランプがこれを拒否した。

「ドナルドは『ここはアトランティック・シティじゃない。ラスベガスだ。必ず売れる』と言った」
 
その甲斐あって、現在このホテルはトランプ支持者、外国人観光客、出張中のビジネスマンで埋まっている。
 
トランプが大統領に就任したことで、状況は複雑化した。トランプの弁護士は、トランプのホテルが外国政府から得る収益はすべてアメリカの国庫に入ると断言した。だが、ラフィンは「彼らがそんなことをするはずがない」と肩をすくめる。
 
ラフィンは今、次のビッグ・チャンスを見据えている。ラスベガスのホテルの隣に所有する4900坪の空き地だ。

「ここを最大限に活用するとしたら、カジノしかない。ドナルドには言えないから、エリックかドナルド・ジュニアに相談することになるだろう」
 
トランプは昨年末、在任中は新規取引を行わないと1700万人のフォロワーを誇るツイッターで宣言したが、その1カ月後に発表した白書では、外国人とは提携しないとだけ記載している。
 
国内でのビジネスは、事前審査を通過する限り、今後も続けることになるだろう。そして、新しいカジノにもトランプの名前が高々と掲げられるはずだ。


フィル・ラフィン◎1935年生まれ。カンザス州ウィチタで育つ。ウォッシュバーン大学に入学するも、ハンバーガー事業が軌道に乗り中退。のちにホテルやカジノで財を成し、現在はラスベガスのトレジャー・アイランド・カジノなどのオーナーとして知られる。トランプの大統領就任式に際しては、100万ドルを献金したとされる。フォーブスの2017年ビリオネアランキングで814位につけるほどの資産家だ。

文=ダン・アレクサンダー 翻訳=中島早苗 写真=ティム・パネル

この記事は 「Forbes JAPAN No.36 2017年7月号(2017/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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