トランプの唯一無二の盟友、フィル・ラフィンという男

トランプとラフィンは25年来の友人。2008年にラフィンが47歳年下の元ミス・ウクライナ、オレクサンドラと結婚した際、トランプがベストマンを務めた。

トランプが絶大な信頼を寄せる不動産のパートナーと言えばただ一人、フィル・ラフィンだ。大胆すぎる戦略でのし上がってきた億万長者の素顔と、次なるトランプ家とのプロジェクトとは?


ラスベガスのトランプ・インターナショナル・ホテルにあるレストランで、フィル・ラフィン(82)は手にしていた新聞を置いた。紙面をにぎわせていたのは、ドナルド・トランプとロシアの関係に関するネタだ。

「彼がロシア中で投資しているなど、馬鹿げている。もしロシアでビジネスをするなら、私に声をかけたはずだ」

ラフィンがそこまで言い切れるのは、25年間におよぶトランプとの友情のおかげだが、今、かなり儲かりそうな共同出資の案件が進行中だからでもある。

トランプは世界中で20人以上のパートナーと提携している。ただ、パートナーと言えども、不動産にトランプの名前をつける権利をカネで取得し、売上高の一部を献上する“顧客”のような存在がほとんど。トランプが自ら共同で投資を行ってきた相手はラフィンだけだ。

「彼以上のパートナーは想像できません」と話すのは、両氏が対等で出資しているトランプ・インターナショナル・ホテルを運営するトランプの次男エリックだ。

「私の父とフィル・ラフィンという2人の大物が関わっているプロジェクトとなれば、一気に信頼性が高まるのです」
 
現在、この2人の億万長者は2週間に1度くらいのペースで会っている。このところ、ラフィンが特に興味を示しているのが、頓挫中の南カリフォルニア=ラスベガス間の高速鉄道建設プロジェクトが復活するかどうかだ。
 
それが実現すれば、年間数百万人がラスベガスを訪れるだろう。となると、同市でホテルを共同所有するラフィンとトランプの懐は大いに潤うことになる。トランプの大統領就任を受けて、ラフィンはこの件について相談を持ちかけたという。

「彼は、『8万人の雇用を生むなら、いい話のようだな』とだけ言った」

これは大統領なら避けるべき利益相反に該当する可能性もある。だが、ラフィンは50年にわたり法や規制をかいくぐって25億ドル(約2800億円)の資産を築いてきた。もはや彼を止めるものは何もない。

コンビニからカジノへ

ラフィンは大学時代、2人の同級生とハンバーガー事業を始めた。のちに2万9000ドルで自分の持ち分を手放し、それを原資に小さなコンビニを買い取った。
 
ほどなくして、1200平方フィート(約110平方メートル)以上の雑貨店の日曜営業を禁ずる法律がカンザス州で成立。偶然、彼のコンビニは1100平方フィートだったので、週に1度独占状態を享受し、そのおかげで事業を13店舗まで拡大した。
 
ラフィンがオクラホマ州に設けた店舗に、石油会社がセルフサービスの給油機を設置した。それに目をつけた彼は、カンザス州でも給油機を導入しはじめた。
 
ところが、カンザス州ではセルフサービスの給油機が違法だった。そこでラフィンは裁判を起こし、たまたま裁判官の娘がコロラド州の学校に通っていてセルフサービスの給油機を利用していたこともあり、法律は撤廃された。おかげで彼は、4州の63カ所に事業を拡大した。
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文=ダン・アレクサンダー 翻訳=中島早苗 写真=ティム・パネル

この記事は 「Forbes JAPAN No.36 2017年7月号(2017/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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