音楽が生活に溶け込んだ時代の「オーディオ機器」の姿

ユニットの組み合わせは自由自在。壁面のサイズに合わせてアート感覚で楽しみたい。スピーカーの数もユニットの数に応じて変化させることになる。

数ある趣味の中でも、オーディオほど奥が深いものはないと言われる。理想の音を追求するために、オーディオ専用の電柱を立て、“ピュアな電気”を求める人もいるほどだ。

しかしこのような一部のエンスージアストを別にすれば、憧れのハイエンドオーディオといえばデンマークのバング&オルフセンではないだろうか。

「バング&オルフセンは、他と違うことを目指します。デザイナーとエンジニアは常に良好な関係を築き、サウンド、デザイン、クオリティ、そしてフィーリングの全てを満たした商品を目指すのです。万人受けは難しいかもしれませんが、“こういうモノを作りたい” というビジョンを大切にしています」。バング&オルフセンでブランド・デザイン・マーケティング担当副社長マリー・クリスティン・シュミットは語る。

音楽配信サービスが充実し、音楽を流しっぱなしにする“ながら聞き”の時代になると、音質よりも“ 聞きたい時に、聞きたい場所で聞くことができる”ということが重視されるようになる。スピーカーの前で腰を据えて名演奏に聞き入るのでなく、ライフスタイルの中に音楽が完全に溶け込んだ状態になっているということだ。

そこで同社は時代に合わせた音楽との付き合い方を提案する。新作「BeoSound Shape」は6角形のユニットを組み合わせ、壁面をアートのように飾るワイヤレススピーカーシステム。組み合わせ方は自由だが、スピーカー、アンプ、コアユニット、ダンパーという4つのユニットを組み合わせてデザインを楽しむ。最小でもユニットは6つからで、ファブリックは10種類。


ミラノサローネの展示会場では、蜂の巣をイメージしてディスプレイ

「壁に設置すると、山頂の連なりにも見えます。光を受けると美しい陰影を作りますが、音響システムとしても優秀です。独自のアルゴリズムを使っており、空間のどこにいても、ボーカルが中央に、バンドがその両脇にいるように聞こえます。壁際で演奏しているイメージですね」

これからのオーディオは、インテリアと馴染んでいくのは間違いない。機器の存在を意識させず、それでいて音響効果に優れる「BeoSound Shape」は、その嚆矢となるだろう。バング&オルフセンは音楽と人間の関係を新たに構築し、そして美しい音楽空間を提案しているのだ。

edit&text by Tetsuo Shinoda

この記事は 「Forbes JAPAN No.36 2017年7月号(2017/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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