シェリル・サンドバーグに学んだ効果的な「叱り方」

シェリル・サンドバーグ (Photo by Vincent Isore/IP3/Getty Images)


「嫌われる勇気」をもって

フレームワークを詳しく見ていこう。図の左上にある「破壊的な共感(RuinousEmpathy)」は、他人のことを心配しても、正直に言わないタイプ。私の経験では、職場での失敗の80%はこれが原因だ。

私には以前、ずっと気にかけていた部下がいた。彼は仕事でミスを続け、チームに迷惑をかけっぱなしだった。私は彼を注意せず、逆に「あなたはもっとできる」と励まし続けた。そしてとうとう彼をクビにせざるをえなくなった。

クビにすると彼に告げたとき、「そんなふうに感じていたなら、どうして注意してくれなかったんだ?」と彼は声を張り上げた。

私は自分の犯した過ちの大きさに気づいた。彼がミスをしたときに、何が悪いのかをはっきり伝えてあげるべきだったのだ。

図の右下にある「不快な攻撃(Obnoxious Aggression)」は、正直に言うくせに、相手のことを本当には考えていないタイプ。このタイプの人は周りから嫌われるが、少なくとも相手の欠点をきちんと指摘しているので、何も言わずにいい人ぶっている「破壊的な共感」タイプよりはマシだ。

4つのタイプの中で最も罪深いのは、「巧みな偽り(Manipulative Insincerity)」だろう。思いやりがないうえ、正直に言わないタイプだ。でも、だれでもこのタイプを経験したことはあると思う。

また私の例を出すと、グーグルに入社してすぐの頃、ラリー・ペイジ(共同創業者)とAdSenseのポリシーをめぐって口論になったことがある。私は納得がいかず、会議のあと、ラリーと部下30人くらいに怒りのメールを投げつけた(「不快な攻撃」)。

自分の考えを正直に書いたつもりだったが、勢い余ってラリー本人の人柄まで中傷してしまった。

「なぜあんなメールを送ったの」と同僚からは心配された。あとで、ラリーがそのメールを面白がっていたことがわかった。でも私はさらにひどい失敗をした。

次にラリーに会ったとき、「私が間違っていました」と謝ったのだ。でも本心では自分が正しいと思っていた。私は自分の主張を曲げてしまったのだ(「巧みな偽り」)。ラリーはその嘘を見抜いていたと思う。

誠実であるべきだ、とは誰もが思っている。でも多くの人は、悪いことを正直に話すよりも、悪いことを隠してでも良い人であろうとする。

私はラリーに「不快な攻撃」をしたあと、横軸を左に動いて、「巧みな偽り」をした。だが本来は、縦軸を上に進んで、「恐れなき告白」をすべきだったのだ。

誰かを怒りたくなったとき、このフレームワークを思い出せば、このような失敗は避けられるはずだ。

キム・スコット◎グーグルでAdSenseやYouTubeのセールスやオペレーションを担当し、アップル大学の講師として活躍。DropboxやTwitterで経営者のコーチも務めた。2017年発売の『RadicalCandor』(St. Martins Press刊)はニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナルのベストセラーに。ほか3つの小説を発表している。

文=キム・スコット

この記事は 「Forbes JAPAN No.36 2017年7月号(2017/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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