ビジネス

2017.07.10

キッチンから生まれたビリオネア! 女性皮膚科医の副業物語

ケイティ・ロダン医師(左)とキャシー・フィールズ医師(右)。2人のオフィスは、サンフランシスコのダウンタウンにある。(photograph by Christian Peacock for Forbes)


以来、R+Fはマルチレベル・マーケティング(MLM、いわゆるマルチ商法)を採用している。販売員であるコンサルタントが、自分の売り上げと、自らが勧誘したコンサルタントの売り上げからコミッションを受け取る仕組みだ。ただし、同社が行っているのはデジタル時代のMLM。2人はこれを「コミュニティ型商取引」と呼んでいる。

販売員は手元に商品の在庫を持たず、ソーシャルネットワークを活用してR+Fを口コミで広めていく。パーティを開催する代わりにフェイスブック上で仮想イベントを開き、ライブ動画配信アプリの「ペリスコープ」経由で商品を売り込むのだ。

成功のチャンスを提供する
 
コンサルタントが販売するのは高価格帯のアンチエイジング商品で、大人ニキビ、シワ、日差しによるダメージ、敏感肌と、異なる悩みに対応する4つのライン。各ラインの洗顔料、化粧水、保湿クリームのセットの小売価格は2カ月分で160〜190ドルだ。
 
フィールズとロダンは、デジタルに注力する2人のやり方は、ほかの直販企業と一線を画していると主張する。アメリカ中の高度な教育を受けてきた多くの女性たちに、2人と同じ自立した事業家になるチャンスを提供していると信じているのだ。そして、R+Fのコンサルタントたちは創業者の医師たちを崇拝しており、2人の起業の成功によって、この事業モデルが正当化されたと考えている。
 
だが、コンサルタントの大半は大した額を稼いでいない。現役のコンサルタントで最低賃金以上の収入を得ているのは、全体の2%に過ぎない。
 
本誌がアドボケアやニュースキンなど、MLM企業16社の販売員の業績を調査したところ、年間総収入で最低賃金を上回っていたのはトップ3%だけ。企業によっては1ドルも稼いでいないコンサルタントが90%近くにも上った。
 
それでも、毎年、ますます多くの販売員がR+Fに登録している。08年にMLM会社として再出発した際、同社のコンサルタントの数はわずか1,350人だったが、16年6月には15万人になった。
 
こうした成長は、MLM会社にはさほど珍しいことではない。まず間違いなく実を結ばない方法で生計を立ててみようとする人々の市場が、飽和状態になるまでは。
 
この飽和状態への治療薬がひとつある。海外進出だ。MLMの母ともいえるアムウェイは100カ国以上で事業を展開し、収益の90%以上を海外で稼いでいると見られている。そしてR+Fもいま、同じ戦略を取っている。同社は15年2月にカナダに進出し、利益見通しの300%増を達成した。次の進出先は17年のオーストラリア。その後は、アジアの巨大スキンケア市場に照準を合わせている。
 
フィールズとロダンは、ペースを落とす気はまったくないようだ。

「やらなくてはならないことが、まだたくさんあるんです」とロダンは言う。

「ビーチでのんびりするつもりはありません。お肌に悪いですから」

ケイティ・ロダン◎カリフォルニア州オークランドで開業する皮膚科医であり、スタンフォード大学医学部の非常勤准教授でもある。南カリフォルニア大学医学部出身。61歳。

キャシー・フィールズ◎カリフォルニア州サンフランシスコで開業する皮膚科医。カリフォルニア大学サンフランシスコ校の皮膚科学の助教授。マイアミ大学医学部出身。59歳。

文=ケイト・ヴィントン 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.36 2017年7月号(2017/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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