ファッションブランドの世界は、アートに共通する面も多いため、数多くのコレクターがいる。
ざっと見渡すだけで、ミウッチャ・プラダ、ヴィクトリアズ・シークレット等のブランドを所有するレス・ウェクスナー、シャネルのオーナーのアラン・ヴェルテメール、そして化粧品ブランドのエスティ ローダーのレナードとロナルド・ローダー兄弟と枚挙に暇がない。
レナード・ローダーがメトロポリタン美術館に寄贈予定のレジェ作「コンポジション」。
ローダー兄弟は、兄レナードがキュビスムの、弟ロナルドがオーストリア・ドイツ美術の世界的コレクターであるだけでなく、それぞれホイットニー美術館とニューヨーク近代美術館の後援者委員会会長に就任するなど、世界のアート界で絶大な影響力を持つ存在だ。
ファッション界の番外編でいえば、イヴァンカ・トランプはなかなかの現代アート好き。夫と気に入って買った作品をインスタグラムに載せたりするが、「頼むから俺の作品と写った写真を載せないでくれ」とアーティストに毒づかれる始末。トランプの娘の宿命か。
一方トランプ大統領は、以前ウォーホルにトランプタワーのシルクスクリーンの制作を購入する寸前までいったが、色彩が地味なことが不満で買取を拒否した。ウォーホルの日記に「彼はちょっとチープだと思う」と評されている。トランプ本人は、本人が10億円と豪語する中程度のルノアール作品を持つ程度だが、イヴァンカは近年5倍強に値上がりしたジョー・ブラッドレーの作品などをかなり早い時期に購入していたりと、なかなかの目利きだ。
スケールの大きなビジネスで成功し、豪快に自分の夢を実現し、それが人としての器を大きくし、次の夢の実現へと結びつく。そこには富の程度に応じた楽しみ方がある。しかし、それだけでは持たざる者の反感を買う。
そこで、将来的に美術品を社会に還元する努力をするし、社会にもそれを助けるシステムが存在する。このリストからは、そんなメガコレクターたちの姿が浮かぶ。フォーブス・リストの上位に名を連ねれば連ねるほど、目立たないことを強いられる日本との違いを感じる。このような状況では、日本の文化の担い手がいなくなると思うのは私だけだろうか。
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