米国内求人は600万件 移民は国民の「仕事を奪って」はいない

"Now hiring"と書かれた求人サイン。2017年6月、ニューヨークシティ。 (Photo by Drew Angerer/Getty Images)

ドナルド・トランプ米大統領と長女のイヴァンカは先日、見習い制度の必要性を強調するメディアイベントにて、米国で現在出ている求人は600万件という米労働省の最新データを指摘した。

このデータは、毎月発表される「求人と労働者の回転に関する調査(JOLTS)」によるもの。それによると2017年4月末の求人数は、前年同期比で40万件増えていた。

労働市場は現在、非常に強い買い手市場となっており、企業や経済学者は、労働者不足により経済成長が妨げられ、企業が運用拠点を移す可能性もあると危惧している。

整形外科向け医療機器を製造する米インディアナ州のジンマー・バイオメット社は、自社工場での労働者を十分に確保できていない。「同社は地域でも最高レベルの給与と手当を提示しているにもかかわらず、従業員不足に苦しんでいる」と米紙ワシントン・ポストは報じている。

同紙は専門家の話として、「労働力不足によりこうした企業の成長が妨げられるだけでなく、労働者確保のため拠点を変えざるを得ない可能性もある」と指摘。

さらに「米国の失業率が過去16年間で最低の4.3%となる中、全国の雇用主は採用候補者不足に直面している。経済学者らによると、特に何百万人というベビーブーム世代が退職を迎えることから、人材不足が国の経済成長の足かせとなっている」と伝えている。

また驚くべきことに、米労働統計局(BLS)によると米国の73郡で失業率は2%以下となっている。失業率がここまで低ければ(あるいはこれより少し高かったとしても)働く能力と意欲さえあれば誰でも就職先が見つかるだろう。失業者は退職・転職活動によって常に一定数存在し続けるため、失業率がゼロまで下がることはない。

ここで、移民をめぐる論争に話を移そう。ノースフロリダ大学のマデリン・ザボドニー教授(経済学)は私に次のように語った。

「低い失業率と、雇用主が労働者不足を指摘している状況から、さまざまな技能レベルの労働者が早急に必要とされていることが分かる。継続的な経済成長により、より多くの国内出身者の米労働市場参入が求められ、国外出身の労働者に対する需要が示されている」
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編集=遠藤宗生

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