最新のシミュレーションによると、銀河が衝突して合体すると2つのブラックホールは互いに引き寄せられ、まるでダンスをするように軌道運動をして徐々に接近し、最終的には一つのブラックホールになる。
これまで、小型のブラックホール同士による合体で生じた重力波が観測されたことがあるが、超大質量ブラックホールの合体は稀で、衝突による重力波が観測された事例はない。シミュレーションモデルが正しければ、多くの銀河の中心には2つのブラックホールが対になってお互いを周回する「バイナリーブラックホール」が存在するはずだが、それを観測するのは困難だ。
これまでにバイナリーを形成した超大質量ブラックホールが間接的に観測された事例はいくつかあるが、2つのブラックホールが近距離にあり、互いを周回していることを証明するためには慎重な観測が必要だ。2009年には、VLBA(Very Long Baseline Array )と呼ばれる複数のパラボラアンテナを結合した電波望遠鏡が、近接しているように見える2つの超大質量ブラックホールを捉えることに成功した。
これらのブラックホールは楕円銀河「0402+379」にあり、共通重心を周回しているように思われた。しかし、地球からは近接しているように見えても、実際には実視連星で遠く離れている可能性もある。そこで、VLBAは2015年に再度観測を行い、2つのブラックホールがお互いを周回していることを証明した。
観測チームは、2003年に収集したブラックホールの位置情報と比較した結果、これらのブラックホールはお互いを周回するのに3万年かかることを突き止めた。2つのブラックホールの距離はわずか24光年で、総質量は太陽の150億倍だという。