トランプ流で大統領の椅子を狙う「インドネシアのメディア王」

トランプ(左)ハリー(中央)ハリーの妻リリアナ(右)


ただある意味で、状況はハリーにとって有利なことも事実である。

「米国には『アメリカを再び偉大な国にしよう』というメッセージがある。この国なら、『インドネシアを再び偉大な国にしよう』だ。それが、私が政治の世界に入る理由だ」と言う。

最新のデータによるとインドネシアの経済成長率は、11年に6.2%だったところから15年には4.8%にまで鈍化している。その状況下で、ハリーは「修正」民主主義を唱え、自由市場的資本主義に反対している。

中国による統制経済などは、ひとつのパラダイムであると考えている。たとえば、インドネシアが国内収穫時期の砂糖きび輸入を禁止すれば、農家が高い値段で売ることができる。

また彼は、表現の自由も支持している。「だれもが言論の権利を持つべきだ。その権利が権力者から与えられたものでない限りは」と語り、現在のインドネシア政界の既成勢力が金を払って世論を動かすデモをさせていることを、オブラートに包んで批判している。

その他にも、貧困者に対する住宅ローンと教育ローンの補助も支持。「トランプの戦略は低層階級を支援していると思う。私もそこに重点を置いている」と語る。

ハリーには巨大なメガホンとして彼の声を拡散させるメディア事業と、トランプとの関係という二つの強みがある。

「米国大統領との関係が、彼に有利に働くという認識が生まれるはずだ」と、インドネシアを長年担当しているアナリスト兼企業リスクコンサルタントのケヴィン・オルークは言う。

ハリーは言う。「みんなが私にミスター・トランプのことを聞く。私にeメールやメッセージを送ってくる。彼らには、ミスター・トランプと個人的な関係があるわけではないと言っている。彼はもうビジネスに関与していない」

とはいえ彼は、頼まれればジョコ・ウィドド大統領とトランプの橋渡しを買って出るという。「もし手を貸してほしいという要請があれば喜んで手を貸す」と肩をすくめる。


ハリー・タヌスディビョ◎実業家。89年にPT. Bhakti InvestamaTbkを立ち上げて金融仲介業を開始。その後、メディアの買収などを経て2000年代「メディア帝国」を作り上げる。現在も60以上のテレビ局を始め、新聞社やラジオ曲を所有。トランプとパートナーシップを組み不動産開発も手がける。14年に副大統領候補として立候補した直後に自身の政党、ペリンド党を立ち上げた。

編集=フォーブスジャパン 翻訳=中島早苗 写真=ジャメル・トッピン

この記事は 「Forbes JAPAN No.36 2017年7月号(2017/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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