推定資産は11億ドル。リアリティ番組と美人コンテスト、ツイッターをこよなく愛し、魅力的な妻を持つ。ビジネスで大成し、まるでトランプの様相を呈したインドネシアの億万長者、ハリー・タヌスディビョが次に目指すのは、国政への進出だ。
「私は10年以内に国を動かしていると思う」と、ハリーは自信たっぷりに語る。「私の政党は踏み石だ。国のために何かをするための踏み石だ。私は、出馬しなければならない」
ハリーはインドネシアの複合企業MNCグループの創立者であり、不動産とメディアで財を成した。トランプはインドネシアのリゾート開発におけるビジネスパートナーだが、ハリーにとっては同時にロールモデルでもある。
あらゆる点でトランプ似
「もうすぐドナルド・トランプが大統領になる」
トランプの就任式の前夜、トランプ・インターナショナル・ホテルのロビーにあるバーでハリーは言った。既にほろ酔いで、自分のティーカップにはペパーミントティーを注ぎ、スコッチが入っている私のタンブラーに合わせ、彼は上機嫌に続けた。
「彼はすべての人に大きなインスピレーションを与えている。もちろん、私にも」。
ハリーはあらゆる点でトランプに似ているが、象徴的なのが口癖だ。英語がそこまで流暢でない彼は、「ビッグ」という単語を好んで使う。ジャカルタにある宮殿のような彼の自宅は?「ビッグ」。彼のビジネス帝国は?「とてもビッグ」。バリに開発中の彼の新しいリゾートのビジョンは?「最もビッグで、ベスト」。
疲れ知らずでほとんど眠らないという点もトランプと同じだ。ハリーは4時か5時に起床し、eメールやWhatsAppメッセージに返信。他の時間も携帯電話を手放さず、数分ごとにチェックする。睡眠時間は一晩4時間くらいだ。警護に付き添われながら100万人を超えるフォロワーに向けて、四六時中ツイッターを更新している。
一日中精力的に動いている彼のペースに合わせるのに、MNCの役員たちは必死だ。副社長のアイヴァン・カサデバルは言う。
「彼はすべてを非常に速いペースでこなす。オフィスで彼がどんなに私たちを急かすか、あなたには想像できないだろうね」
目指すのは「究極の調停者」
ジャカルタの1ブロックほぼすべてを占めるハリーの自宅には、ヤシの木と大理石と高い円柱があり、池には鯉がうようよしている。ベッドルームは10室。23人のスタッフが週7日24時間体制で待機している。いかにもトランプ的なその豪邸に、ディナーに呼ばれたときのことだ。
テーブルにはハムやサラミ、ダック・コンソメ、ハマグリ、魚料理、和牛、ホワイトチョコレートのムースなどの料理が次々に供され、2000年のシャトー・ラフィット・ロスチャイルドといったワインが気前よく注がれた。