企業と研究者をマッチングする「Science Exchange」 累計68億円を調達

Science Exchangeを設立したエリザベス・アイアンズ(Credit: Science Exchange) Pressmaster / shutterstock.com

エリザベス・アイアンズはかつて、マイアミ大学でがん治療を研究する博士研究員だった。遺伝子研究の難題に直面した際に、大学にその分野の専門家はおらず、高度に専門的な知識を持つ人材は地元には皆無だった。

「こちらのニーズに合う、専門家の助けを得ることが非常に難しい。ふさわしい相手の居場所すらつかめない現実に気づいた」とアイアンズは言う。


Science Exchangeを設立したエリザベス・アイアンズ(Credit: Science Exchange)

アイアンズが企業と研究機関をつなぐマーケットプレイス「Science Exchange」の設立を思い立ったのはその時だった。2011年設立の同社は1000社にのぼる企業を手助けし、2500ヶ所にのぼる研究機関をサービスプロバイダとしてリストアップしている。

Science Exchangeは先日、2800万ドルのシリーズC資金調達を実施した。今回の調達ラウンドはNorwest Venture Partnersがリードし、既存出資元のUnion Square Venturesや Maverick Capital、 Collaborative Fundも参加した。同社の資金調達額は累計で6000万ドル(約68億円)に達している。

Science Exchangeに参加する企業の研究者らは、目的にかなった研究機関とつながることが可能で、案件を即座に依頼できる。Science Exchangeは利用すると5%〜10%程度の手数料を徴収するが、企業側は法的手続きやコンプライアンスがらみの業務を削減でき、時間的にもコスト的にもメリットは大きい。

Yコンビネータ出身のアイアンズは自身が直面した問題の解決のためにScience Exchangeを立ち上げたが、過去2年で大手製薬会社やバイオテック企業にまで顧客を広げてきた。将来的には航空機分野や農業サイエンス分野、化学やコスメ、食品分野にまで領域を広げようとしている。

日本の大手企業からの依頼も

今回の調達資金はエンジニアチームと研究者の増強に用いるという。Science Exchange はサンフランシスコのパロアルトとボストン、さらにアイアンズの母国であるニュージーランドと欧州にも拠点を持ち、60人のスタッフを抱えている。

同社がマッチングする研究期間の60%は米国内だが、依頼案件の半数は海外からで、ヨーロッパが35%、残りの15%を日本を中心としたアジア諸国が占めている。主要顧客としてはバイオファーマ企業のGileadやNASA、ドイツの医薬・化学企業のメルク等があげられる。

Science Exchangeによると企業のR&D予算の約40%がアウトソースに用いられているという。Norwestの担当者によると、バイオテックや製薬業界でこの分野の市場規模は1400億ドルにのぼるという。仮にScience Exchangeがこの市場の50%のシェアを獲得し、5%の手数料を得ると仮定すると同社の売上は35億ドル(約3900億円)に膨らむことになる。

ただし、これはあくまでも仮定の話で、Science Exchangeの現状とはかなりの隔たりがある。また、同社が直面する課題としては、外部の研究機関としてクライアントのIP(知的財産権)を完全に保証せねばならないこともあげられる。

アイアンズによると同社は、この分野で世界最大の企業の一つだという。「R&Dがらみの業務の全てを、当社のプラットフォーム上のやりとりで解決できます」とアイアンズは述べた。

編集=上田裕資

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