ナイトの資産総額はフォーブスの試算によると、現地時間6月30日午後2時15分の時点で266億ドル(約3兆円)に達し、世界29位の富豪となった。
これは29日の取引終了後にナイキがアマゾンで直販を開始するとの報道が流れ、さらにナイキの第4四半期の業績がウォールストリートの予測を上回ったことが分かり、ナイキの株価が11%近く上昇したことによるもの。フィル・ナイトの資産は19億ドル(約2135億円)も増加した。ナイトの資産額は7月2日時点で270億ドルに達している。
ナイキのCEO兼会長のマーク・パーカーは29日、アマゾンでの直販を実験的に始めると発表。「アマゾンの利便性とナイキのブランド力や商品力のコンビネーションがどのような結果を生み出すか楽しみだ」と、業績発表後にアナリストや投資家たちに話した。
ナイキはアマゾンへの直販を拒んできたが、サードパーティーの転売業者にアマゾンでナイキ商品を安売りされているという状況があった。ウォール街はアマゾンとの提携を好意的に受け止め、株価は時間外取引中に7%以上跳ね上がった。さらにナイキの第4四半期の売上が86.8億ドル(約9750億円)と、アナリスト予想の86.3億ドルを上回ったことも好材料となった。
ナイトが会長を退任したのは2016年6月。ナイキの前身であるブルーリボンスポーツを陸上コーチのビル・バウワーマンと創業してから52年後のことだった。ナイトは現在ナイキの名誉会長を務めている。
ナイトは2015年6月に会長を退任する意向を表明した際、ナイキ株を管理するためにSwoosh LLCを立ち上げた。会長退任後、ナイキ役員でもある息子が代表を務める家族信託が、ナイトが保有していたナイキ株の過半数についての議決権を12億ドル(約1348億円)で購入した。遺産計画の専門家は、この動きは資産譲渡の一環であり、巨額の贈与税を回避するために議決権を売り渡したと推測する。
オレゴン大学で陸上選手として活躍していたナイトは、スタンフォード大学でMBAの勉強中にナイキの構想を得た。1962年に卒業後、世界を旅して日本の靴のサプライヤーに出会った。アメリカに帰国するとナイトとバウワーマンはそれぞれ500ドル(約5万6000円)を出資し合って起業。1978年にナイキと改名し、その2年後には上場を果たした。