やりたい仕事だけをやる、31歳 世界的フォトグラファーの生き方

tomertu / shutterstock



世間の物事にノーと言い続けてきた


「編集者から離れ、常に批評に晒されることもない状況で、純粋に自分のやりたいことに集中した。(雑誌や企業の)ロゴから解放された状態で、時代を超越した旅を本に収めたかった。(写真集は)自分の作品を人々に見てもらうための素晴らしいツールになった」

それ以来、バーカードのもとには企業からの仕事のオファーが途絶えない。これまで組んだ企業は、クライミングとヨガウェアブランドのプラナや、パタゴニアといった環境保護に力を入れている大手から、タオルメーカーのノマディックス、ライフスタイル系Eコマースのハックベリーといったスタートアップまで幅広いが、「自分の名前を出す場所は厳選している」とバーカードは言う。

「いつも思い出すのは、かつて売り込みに行った先の編集者のこと。彼の机の上には山のようなプロモーション資料が積み上げられていた。ただ机の前に座って、相手が売り込んでくるのを待つ人間にはなりたくないと、その時に思った」

現在、バーカードは自身が設立した制作会社「クリス・バーカード・スタジオ」で5人の常勤スタッフと2人のパートタイムスタッフとともに創作活動を行っている。この夏は、広告、雑誌、ワークショップ、SNSでの活動に加えて、北極圏の自然とサーフィンを撮影した40分のドキュメンタリー「Under the Arctic Sky」の上映活動で全米を回る。

「どんな職業にも、仕事が単調になってしまう危険はある。だから『Under the Arctic Sky』のようなプロジェクトで自分を試したい。自分は今でもハスラーで、この生き方はずっと変わらない。ハッスルとは、バリバリ働くこと以外に、ゴールへの道を妨げる障害物には一切関わらないことを意味する。やりたい仕事を実現するために、人生のいろんな物事にノーと言い続けてきた」

多彩な活動に一貫しているのは、アウトドアを愛する心と、自然保護への願いだ。

「私の作品がきっかけで、それまで知られていなかった場所が注目を浴び、観光客が来てしまうという人たちがいる。でも手つかずの状態を保つことの大切さを知ってもらうためには、その場所の美しさを伝える必要があるはず。私にとっては、大金を稼ぐことよりも、人に仕事を与えること、そして気候変動や環境保護といった大きなテーマに光を当てることのほうが大事なんだ。それも冒険に満ちた、説教くさくないやり方でね」

編集=海田恭子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事