フェイスブックが米シカゴで6月下旬に開催した第1回「コミュニティー・サミット」で、ザッカーバーグは「私たちはこの10年間、世界をよりオープンでつながったものにすることに注力してきた。私たちには、世界の絆を強める責任がある」と述べ、同社を導く光となるビジョンとなる新たな企業理念を発表した。
ザッカーバーグは、フェイスブックが「人々にコミュニティー構築の力を与え、世界の絆を強める」ために今後も存在していくと表明。スライドにはこのビジョンが「Bring the world closer together(世界の絆を強める)」というたった5つの単語で要約された。
世界の絆を強める
ザッカーバーグは1か月前、米ハーバード大学の卒業式でスピーチを行い、このビジョンを説明していた。
その中で彼は「コミュニティー」という言葉を16回使い、「私たちの世代で、より緊密につながる、より大きな機会をつかめるかどうかは、コミュニティーを構築し、全ての人が目的意識を持つ世界を創造する皆さんの能力にかかっている」と卒業生に向けて語った。
ハーバードの元学生であり、現在はリーダーシップについて学んでいるザッカーバーグは、同大学のジョン・コッター教授の研究内容を知っているかもしれない。コッター教授は多くの事業変革が失敗する理由を分析した論文で、リーダーが犯す決定的な過ちの一つに、明確で簡潔なビジョンを伝えられないことがあると結論づけた。
「私が見てきた変革成功の例では全て、比較的伝わりやすく、顧客・利害関係者・従業員を引き付けるような未来図を、改革主導者が描いていた」。明確なビジョンがなければ組織改革の取り組みは「混乱を生み、両立が不能なプロジェクト」の数々に「分解」されてしまう、とコッターは論じている。
従業員は、ザッカーバーグが表明したような明確で訴求力のあるメッセージなしで変革が進むのを目の当たりにすると、混乱し、疎外感を持ち、士気が下がってしまう。