米国メーカーの良きお手本 スズキと英国ケータハムの見事なコラボ

ケータハム社提供


レトロな雰囲気を放ちながらも3気筒ユニットの感覚は現代的だ。2500回転から感じる力強いターボブーストは意外だった。やはりこのクルマは軽い! また、高回転域でアクセルオフしたときにターボから聞こえてくる「ブルルルル」という音は、まるで仔犬がはしゃいでいるようで愛しくてたまらない。5速M/Tはクロスレシオだから、2、3速がカチっと入ると達成感を感じる。

限界を確かめようとする前に、このノスタルジックなセヴンの子孫にはパワーステアリングもABSも、エアバッグもトラクション・コントロールもないことを思い出さなくてはならない。60年前の走りはこうだったなと感じられる。 シャシーのバランスが絶妙で、 パワーアシストのないステアリングの重さと手応えが気持ちいい。

でも、正直なところ、パワーステアリングもなく、今ではあたりまえの運転補助機能もなく、路面に限りなく近い低さのオープン・スポーツカーだから、慣れるのにちょっと時間がかかる。風音、ロードノイズを強く受けるし、トンネルに入れば轟音と振動が半端じゃない。左足を置くフットレストがないので左の腿がつらくなるなど、やはり長距離のドライブには向かない。


唯一の“海外製”軽自動車

さて、トランプ大統領に聞いて欲しいのはここからだ。 美しいケータハムとスズキの軽自動車のエンジンのコンビネーションは、世界のクルマ好きのハートを鷲掴みし、見る人誰をも笑顔にする。しかも黄色いナンバープレートを付けたスプリントは、 わずか数週間で完売しただけでなく、 同社の日本での販売は4倍に跳ね上がった。

アメリカ車がソッポを向かれるのは、この国の道路事情に適したクルマが供給されてないからだ。多くの日本のユーザーは、手頃な価格で低燃費で安全な運転しやすい小型車を求めている。マーケットの4割は軽自動車だが、これは日本のカーメーカーに独占されている。軽自動車という特異だが実に面白いクラスに挑戦しない手はない。

日本でアメリカ車を売りたいなら、大きな高級車ではなく、この日本の道路事情に合う軽自動車、または1Lか1,4Lのターボでスタイリッシュなクルマを作るべきだ。日本のメーカーだって、アメリカ市場に適した大型車やSUVを作って大成功を収めたではないか。ミニバンやSUVの人気も高まっているのだから、SUV作りが得意なアメリカにもチャンスはある。

トランプさん、「買え買え」と言うばかりでなく、日本のユーザーが乗りたいスタイリッシュな小型車を作ってみてはどうだろう。

文=ピーター・ライオン

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