東京発「地方おこし」の仕掛け人10人

アソビュー、山野 智久社長(photographs by Jan Buus)



とらわれない“発想”で革新的な風邪を
/umari 古田秘馬


「僕の中には都市から地方という考え方はありません。歴史的に見ると、新しいものが生まれてきているのは都市ではなく地域側ですから」
 
そう話すのは数多くの地域プロデュース・企業ブランディングを手がけるumari代表の古田秘馬だ。古田は次にこう続け、概念を再定義していく。

「グローバル経済の反対は、コミュニティ経済。そのコミュニティが派生しやすいのが地域です」
 
彼が企画・運営する市民講座「丸の内朝大学」では、学びを軸にコミュニティがつくられ、地域とつながっている。たとえば、和太鼓クラスでは、佐渡島で活躍する有名な「鼓童」という和太鼓グループに演奏を学びにいく。佐渡島にただ観光に行くことよりも、鼓童に学ぶことに価値が生まれる。

「観光地化ではなく、新しい関係地づくりです。人が地域に入っていく土壌をつくることが大切です」
 
そんな古田が現在、手がけているのは、高速バス大手WILLERと共に行う、自然や街の風景を眺めながら料理を楽しむ「レストランバス」。さらに、キリンと共に、食文化を中心に地元を盛り上げるプロジェクトを生み出す人たちをつなぐという企業を巻き込んだ新しいアライアンスを行っている。

そして鉄道ファンのアイデアを実現するローカル鉄道ファンドによる地域コンテンツへの投資だ。これらはいずれも地域にとって補助金だけではない「新しい選択肢」につながるという。


現在、新潟プランと熊本プランがある「レストランバス」。地域内での利用者も増え、地域にいい循環を起こしている。

「そもそも、地方創生という言葉が好きではないんですよ。事例紹介にも興味がない。そんな簡単に成功しないからです。自分たちで努力し失敗も重ね、それでも何かをつくった地域はそれが一つの地域モデルになる。ただ、挑戦をするうえでは、企業との連携など『新しい選択肢』が重要になる。それをつくるのが地域外にいる僕の仕事です」

地域おこしの仕掛け人10人


秋好陽介
ランサーズ社長/「熱意ある地方創生ベンチャー連合」代表理事

地方自治体などと提携し、日本全体に仕事を再分配する「地方創生」事業を開始。クラウドソーシングで、好きな場所に住み、好きな時間に働ける社会へ。(1981年、大阪府生まれ。2005年ニフティに入社し、ITサービス企画・開発を担当。08年クラウドソーシングサービス運営の同社創業)

大社充グローバルキャンパス理事長/DMO推進機構代表理事

町おこしや地域資源を活用した集客コンテンツの開発、人材育成に取り組む。事業構想大学院大学で「観光まちづくり(DMO)プロジェクト研究」も担当。(1961年、兵庫県生まれ。87年エルダーホステル協会の創設に参画、2000年専務理事。13年日本観光振興協会理事。14年より現職)

沢登次彦じゃらんリサーチセンター長/とーりまかし編集長

観光産業発展のため、消費者の需要創造や地域の魅力向上を目指す、じゃらんリサーチセンター長。観光庁や地方自治体の審議会委員も務める。(1969年、東京都生まれ。93年入社。2002年旅行事業へ。関東近郊のエリアプロデューサーとして地域活性に携わる。07年より現職)

重松大輔スペースマーケットCEO

シェアリングエコノミーで、地域の古民家でIT会議をする外国人、温泉街で株主総会などのニーズを開拓。「熱意ある地方創生ベンチャー連合」メンバー。(1976年、千葉県生まれ。NTT東日本、フォトクリエイトを経て、2014年、スペースの貸し借りをネットで仲介する同社を創業)

田中仁ジンズ社長

2014年に、田中仁財団を設立し、「GUNMA INNOVATION AWARD」をはじめ、生まれ故郷・群馬の地から次世代を担う起業家の発掘・育成を行う。(1963年、群馬県生まれ。88年ジェイアイエヌ(現ジンズ)設立。2001年アイウエア事業の「JINS」を開始。14年「田中仁財団」設立)

馬場正尊Open A代表/東北芸術工科大学教授

使われなくなった、地方自治体の公共空間の情報を集め、買いたい、借りたい、使いたい市民や企業をマッチングする「公共R不動産」を運営。(1968年、佐賀県生まれ。博報堂を経て、02年Open Aを設立。「東京R不動産」「公共R不動産」などを運営。建築家)

平出淑恵コーポ・サチ社長

日本酒造青年協議会に参画、世界最大規模のワインコンペティション(IWC)に日本酒部門創設など、日本酒を世界に広める酒サムライとして活躍中。(1962年、東京都生まれ。83年日本航空入社。シニアソムリエ資格取得後、日本酒を通じて日本の文化を世界に紹介するべく、2011年創業)

古田秘馬 ━umari代表

「レストランバス」、農業実験レストラン「六本木農園」、「Peace Kitchenプロジェクト」など都市と地域、世代をつなぐ仕組みづくりを行う。(東京都生まれ。慶應義塾大学中退。「丸の内朝大学」など地域プロデュース・企業ブランディングを数多く手がける。プロジェクトデザイナー)

山野智久アソビュー社長・「熱意ある地方創生ベンチャー連合」代表理事

「熱意ある地方創生連合」代表理事。総計29社のベンチャーと地方創生に取り組む。体験予約サイト「アソビュー」を運営し感じた地域の可能性に挑む。(1983年生まれ。学生時代に起業、フリーペーパーを発行。2007年リクルートに入社。11年、体験予約サイトを運営する同社を創業)

ルーカス・バデキ・バルコニーハイメディア・ジャパン代表

雑誌「PAPERSKY」などメディアを通じて地域バリューを発信、企業や自治体と連携してコンテンツビジネスを展開。新ソーシャル・アクティビティーを開拓中。(アメリカ生まれ。カリフォルニア大学卒業後に来日。NTTドコモのアプリメディアや日本再発見の旅プロジェクトも手がける)

文=フォーブスジャパン編集部

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