最近特に目立つのは、ロサンゼルスを拠点とする環境にやさしいブランド「リフォーメーション(Reformation)」の黒いトートバッグを持った女性たちだ。バッグは丈夫で、シックで、ミニマリストなデザイン。買い物をすれば、無料でもらえる。スタイルと持続可能性を同時に取り入れたことで人気の同ブランドは、紙袋でもレジ袋でもない、環境への影響を減らす再利用可能なショッピングバッグを提供している。
こうした無料のバッグを提供することでブランド側が得るのは、宣伝効果だ。主な顧客層であるおしゃれな若い女性たちが長くバッグを再利用してくれれば、他の何にも代え難い「草の根」宣伝活動になる。
買い物袋を使った宣伝は、ずっと以前から行われてきた。無料でもらえる高級百貨店ブルーミングデールズの茶色の紙袋、エルメスのオレンジ色、ティファニーのブルーの紙袋は、いずれも手にしている以外の人たちに対し、ブランド名を明確に示すためのものだ。誰がどの店で買い物をしたのか、一目で分かる。
また、流行の最先端をいくヒップスターたちの姿が目立つマンハッタンの書店「ストランド」や日本の衣料大手「ユニクロ」では、自社のロゴを意図的に目立つように入れたエコバッグを販売している。
効果は「絶大かつ限定的」
ただ、こうした長年の「流行」は、少しおかしな方向に進み始めたのかもしれない。スウェーデンの家具販売大手イケアは先ごろ、買い物客向けに99セントで売っているブルーのトロリー用バッグの新デザインを、高級ブランドのデザイナー、ヴァージル・アブローに依頼した。
また、仏高級ブランドのバレンシアガは、白地に黒い文字でブランド名を書いた「紙袋にそっくりなデザイン」の本革(カーフスキン)製エコバッグを1100ドル(約12万3000円)で発売した。
──ばかげた話のようにも思える。インターネット上では、バレンシアガに対する批判の声が多数聞かれた。「関心を引きたいだけ」との厳しい意見も寄せられるなか、英紙サンは「バレンシアガ、偽の紙袋を876ポンドで発売 理由は不明」と報じた。だが、それでもこのバッグはすぐに完売となった。
ロゴを入れた買い物袋の提供が、昔ながらのマーケティングの手法の一つであることに変わりはない。そして、その宣伝効果は大きい一方、限定的でもある。紙袋をそう何度も繰り返し使う人はいないだろう。無駄をなくしたい各社がそこで考え付いたのが、再利用可能なショッピングバッグだったのだ。使い捨ての袋がブランド構築にもたらす影響は一時的なものでも、再利用してもらえるバッグなら、効果は長く続く。
本革を使ったことは、ちょっとした遊び心によるものなのだろう。また一方では、デザインを「象徴的」なものにまでに引き上げようとする真剣な試みでもあったかもしれない。
バレンシアガもイケアも、目指したのは「すぐに自社ブランドのものと分かり」「人が欲しがる」影響力あるショッピングバッグだ。今後、他にも後を追うブランドが登場する可能性はある。