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2017.06.26 15:01

ゲイツ夫妻も実践 新たな寄付のトレンド「効果的な利他主義」とは


米国で集められる寄付金は年間3500億ドル(約39兆円)にのぼるが、最も効果的な団体に流れておらず、国外の貧困層への寄付は全体の2.5%程度だ。

とはいえ、ムーブメントが世界的に広がっているのは確かだ。最も効果的な慈善団体としてランクインしている組織への寄付は年々増えている。英国のオックスフォードには、「効果的な利他主義センター」という慈善団体もある。オックスフォード大学と連携し、学術的機関としての役割も担うことになるだろう。

──TEDトークで、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の「すべての命は平等の価値を持つ」という理念が彼らを最も効果的な利他主義者にしている、と語っていますね。

ゲイツ夫妻は、富の多くを寄付し、極貧の人々を助ける方法を富裕層に示した。衛生設備や医療の欠如により、下痢で死ぬ子供たちが大勢いることに心を痛め、対策に乗り出した。すでに、下痢やマラリアで死ぬ子供たちの数を減らすことに成功している。

彼らが社会にもたらす最大の価値は、極度の貧困を減らすべく活動を行っている点だ。健康状態の改善や子供たちの教育に貢献することで、世界を大きく変えている。まさに、効果的な利他主義者が目指すものだ。

効果的な利他主義には、いくつかのパターンがある。“earning to give(与えるために稼ぐこと)”も、その一つだ。高額報酬の仕事を選び、多くの寄付をすることで、より効果的な慈善活動を行う。

──慈善文化が社会に根づいていない日本で「効果的な利他主義者」になるためには、どうすればいいのでしょう?

少額の寄付でも世の中を大きく変えられることを認識すべきだ。発展途上国の村や町と姉妹提携を結び、現地の人々を支援するのもいい。

また、ニューヨークの「GiveDirectly(ギブ・ダイレクトリー)」のように、極貧に苦しむアフリカの人たちに少額の寄付金を直接送ることができる慈善団体にアプローチするのもいい。わずかな額でも、ケニアなどの人々が貧困を抜け出す助けになる。現地の人々と交流もできる。米国の効果的な慈善団体にアプローチするのも一考だ。


ピーター・シンガー◎プリンストン大学教授。メルボルン大学教授を兼任。1946年生まれ、オーストラリア出身の哲学者、倫理学者。功利主義の立場から倫理の問題を探求。『実践の倫理』など著書多数。
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文=肥田美佐子

この記事は 「Forbes JAPAN No.37 2017年8月号(2017/06/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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