ゲイツ夫妻も実践 新たな寄付のトレンド「効果的な利他主義」とは

ゲイツ夫妻(Photo by Frederic Stevens/Getty Images)


効率・効果で寄付先を決める

「20組織以上、徹底的に調査をして、『ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)』に寄付することに決めた」

そう話すのは、クイン・リオダン(52)。日本興業銀行、バークレイズ、タイガー・グローバル、自ら立ち上げたヘッジファンドを経て、6年前に第一線を引退。現在、東京、ハワイ、シンガポールの3拠点を行き来している彼は、世界最大級の人権NGOへ寄付することを決めた理由について次のように話す。

「寄付に回せるお金には限りがある。だからこそ、効率と効果を重視した。『腐敗をなくし、正義が重視される世界に』という自分の思いが実現できる可能性が高いからだ」

クインの基準である効率と効果とは明確だ。

「効率とは、組織が寄付で集めたお金の70%以上、活動やプログラムに費やしているか。効果とは、“人類の悩みを減らす”という課題解決にどれだけつながるか、だ。HRWは75%以上、活動に費やしている。さらに、2015年のナイジェリア選挙をはじめ、人権を虐げている独裁者や国家権力を監視、追い込むことで、人々を搾取、暴力、弾圧から解放し、人類の悩みを解決へと導いている」

HRWは本部アメリカ、90カ国で活動するグローバルな組織。年間寄付総額72億円にのぼる。HRW東京の趙正美はこう語る。

「寄付していただく方は、ノブレス・オブリージュ(高貴な義務)の精神に加え、平和は、お金を出して維持しないと守ることができないという思考がある。経済活動は平和を前提にしないと成立しないため、“寄付ではなく投資だ”と考える人も多い」

文=肥田美佐子

この記事は 「Forbes JAPAN No.37 2017年8月号(2017/06/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事