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「実際に自分たちでやって見せて、そのノウハウをあえて国に“パクらせて”政策化してもらう。そして、参入する事業者を増やして、社会インフラにする。自社だけで事業拡大するよりも、その方がより多くの困っている人たちを助けることができる。それがソーシャルビジネスの戦い方です」

駒崎はどのように「政策化」し、課題解決に導いたのか。

駒崎はまず「おうち保育園」を開設すると、旧知の政治家、官僚に働きかけ、視察の受け入れ、提言をするなど「政策化」への地ならしを行うとともに、市区町村など自治体を巻き込み、様々な地域で「おうち保育園」を16園開設した。小規模保育所の運営ノウハウを蓄積するとともに、実績をつくっていく。

そして13年には、「全国小規模保育協議会」という業界団体をつくり、自ら理事長に就任し、政策化に向けた国の審議会に業界団体の代表として関わっていく。「子ども・子育て支援法」法案の細かい点を詰めていく段階から関わり、現場からの意見を法案に盛り込むためだ。

こうした戦術に至った背景には、駒崎が経験した“失敗”がある。フローレンスが創業した05年よりはじめた病児保育事業でのことだ。訪問型病児保育という新領域を手掛けていた駒崎の事業が、同年、国により「緊急サポートネットワーク事業」として制度化。鳴り物入りではじまったものの、効果がでないまま3年で終了した“ 苦い経験”だ。

「厚労省から2時間程度、ヒアリングを受けた後だったので、当時は“パクられた”と憤っていたのですが(笑)。ただ、社会福祉の先輩から『国にパクらせることで世の中よくなっていくんだ』と忠告され、考え方が変わった。現場の細かいニーズや意見が反映された政策であれば、社会インフラにつながるのではないか、と。だから、小規模保育所の時は、政策化する過程の最初から口をはさんでいった」

フローレンスで展開している小規模保育所は東京都内、仙台市の17園。しかし、駒崎が起こした一連の「政策化」は間違いなく社会的インパクトを残した。そして、全国小規模保育協議会は現在、保育園運営のノウハウを伝える活動や、保育の質を高める研修制度を用意。さらに、事業者同士のネットワークづくりの場となっており、まさに「小規模認可保育園が社会インフラになるためのプラットフォーム」として機能しはじめている。

駒崎は、社会課題解決策として3つの戦略をあげている。

(1)社会問題への「小さな解」を、事業として生み出す、(2)政治や行政とともに「小さな解」を政策にし、全国に拡散する、(3)自らも最良の事業者として、インフラを創造し、最後のひとりまで助ける─。「小規模保育所」の成果はまさにその戦略を地でいくものだった。

駒崎率いるフローレンスは現在、売り上げ高19億円、社員520名。事業の収益と寄付を元手に病児保育、小規模保育所とこれまで手掛けた事業で培った経験、知恵を生かして、障害児保育、赤ちゃん縁組事業など新しい社会課題の解決にも取り組んでいく。

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こまざき・ひろき◎認定NPO法人フローレンス代表理事。NPO法人全国小規模保育協議会理事長。厚労省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長、内閣府「子ども・子育て会議」委員を務める。1979年生まれ。

文=フォーブス ジャパン編集部

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