社内取締役は減らさず増やすべき 米研究者らが企業に警鐘

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独立取締役が多い取締役会は、倫理面での魅力があり、大手企業では一般的に見られるようになった。だが、社内取締役が最高経営責任者(CEO)1人のみである取締役会には問題があることを示した新たな研究結果が発表された。

オーバーン大学、アリゾナ州立大学、ライト州立大学、セントラルフロリダ大学の研究チームが発表した論文では「部内者が1人しかいない取締役会は行き過ぎだ。そうした取締役会は、同業他社や他の(トップ経営陣)メンバーと比べて過剰な報酬をCEOに支払い、財務上の不正行為をより多く許容し、良い働きができない」と指摘されている。

研究チームは、1638社を対象に、2003年から2014年までのデータを分析。その結果、唯一の社内取締役を務めるCEOは平均で470万ドル(約5億2000万円)多く報酬を受け取っていることが分かった。これは会社の規模や業界などの要因から想定される報酬よりも82%高い計算となる。また、社内取締役が1人のみの取締役会が統括する企業では財務上の不正行為が他の企業の1.27倍起きていた。

1990年代後半以降、エンロンやワールドコムなどでの不祥事の頻発により、取締役会の独立性を求める規制への注目が高まった。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、S&P1500企業で社内取締役を1人しか置いていない組織の割合は2000年には41%だったが、現在は半数を超えている。

では独立社外取締役が多いと、なぜ弊害が生じるのだろうか? 唯一の社内取締役であるCEOは、情報の流れを制限することで取締役会の目に入るものをコントロールし、取締役会による綿密な監視を阻む場合があることが、過去の研究で明らかとなっている。こうしたCEOは、自分を可能な限りよく見せようとして常習的に情報を取り繕う恐れがある。

社内取締役がCEOのみであっても、他の社内の人間が取締役会に全く参加しないわけではない。例えば、最高財務責任者(CFO)は取締役会で財務報告をよく行う。しかし、CFOには取締役という地位はなく「その継続的な関係性を享受していない」と論文の共同執筆者クリスティーン・シュロップシャーは指摘している。

編集=遠藤宗生

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