「AI大国」米国ににじり寄る中国、薄まる日本の存在感

humphery / Shutterstock.com


AI大国として世界をリードしている米国、その後を怒涛の勢いで追いかける中国。これら二強の競争はどうなっていくのだろうか。前述の技術分野別特許数を米中で比較すると、米中ともにロボットがトップであることは変わらず割合も約3割、音声認識は中国8.1%(第3位)に対し米国24%と第2位だ。

ただ、ボイスチャットサービスや標準語口頭試験による官民に蓄積された音声データの利活用がさらに進み、中国語認識や応対の精度が高まれば、中国では同分野の特許数割合が高くなる可能性がある。

中国10.4%(第3位)の画像認識は米国5.4%で第5位、この分野では百度(バイドゥ)が先行しており、同社が進める自動運転車開発への応用にもつながっている。百度の研究・開発動向は、グーグルとの競争という側面から注目したい。

なお中国17.9%(第2位)のニューラルネットワークが米国14.9%で第3位とほぼ横並び。中国ではトップ5に入っていなかった機械学習が米国6.8%では第4位に入っている。しかしこちらも、中国国内の大学ではデータサイエンスを扱う学科の設立が進んでおり、優良なデータマイニング技術を持つ人材が増えれば、機械学習、深層学習分野が急速に成長していくだろう。

存在感の薄い日本

米中AI産業の関係性を知る上で興味深いデータもある。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が発表した2016年の調査統計によると、2011年〜2015年における米国のAI関連論文の共著率は12.7%で中国がトップ、中国から見ても米国が10.6%でトップであった。

これはそれぞれ2位に大きな差をつけての結果となっており、さらに米国企業の中国AI企業への投資案件も生まれている。同分野での米中協力体制が進む中、残念ながら日本の存在感は少々薄い。

米中協力体制による産業全体の拡大は、今後もハイペースで進んでいくはず。数字だけではすべての状況を把握できるとは限らないが…。急速に成長する中国AI産業が米国に追いつくのは、おそらく時間の問題かもしれない。

文=川ノ上 和文

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事