ビジネス

2017.06.26 08:00

「ブランドを育てる」 LVMH傘下コスメ企業が守り抜くルール

Jasni / Shutterstock.com

Jasni / Shutterstock.com

肌にやさしい日焼け止めを製造するスタートアップ「Supergoop!」にとって、コスメ専門店セフォラでの取り扱いはブランドの成長に不可欠だった。元教師の創業者ホリー・ハガードが小売店への売り込みに悪戦苦闘していた頃、セフォラのバイヤーはすぐに契約する代わりに、ハガードに商品ラインナップの構成や広報戦略に関するアドバイスを与えた。

Supergoop!の商品がセフォラの棚に並ぶようになって6年が経つ現在も、セフォラはマーケティングや商品開発、海外法規制への対処法などの面で手助けを行なっている。新商品の、メイクの上から使える日焼け止めスプレーも、セフォラの提案で作ったものだ。「セフォラは常に私たちを支えてくれています」とハガードは言う。

これはセフォラが小規模な新進ブランドと組む時の典型的なやり方だ。多数の高級ブランドを擁するLVMHの傘下で、米国内に約350店舗、世界に約2300店舗を構える同社は、取り扱いブランドの商品を売るだけではなく、美容系スタートアップのインキュベーターの役割を果たしてきた。同社でスキンケア・ヘアケア用品部門を担当するプリヤ・ヴェンカテッシュは、「(スタートアップ)ブランドと密接に関わるのがセフォラのビジネスモデルです」と言う。

セフォラがこれまでに成長させたブランドには、Urban DecayやToo Facedなども含まれる。前者は2012年にロレアルに買収され、後者は2016年にエスティ ローダーに14億ドル(約1560億円)で買収された。小売コンサルティングファームGraysonのアマンダ・ダヴォンポートは、「セフォラは常に支援対象となる新進ブランドを探しています。(実際に契約するブランドは)正しい選択をしてきて、急成長する可能性を持ったブランドです」と話す。

ブランドを成長させていくDNA

最近の例では、美容系スタートアップの養成機関Luxuary Brand Partners(LBP)から誕生したヘアケア用品ブランドのIGKがある。LBPの最高投資責任者でIGKプレジデントを務めるデヴァ・フィンガーによると、セフォラは昨年夏にIGK商品の独占販売を始めるにあたり、通常のシャンプーやコンディショナー以外の売れる商品を開発するように要請したという。

その結果、29ドルのスプレー缶入りクレンジングオイル「SMOKE & MIRROR」が生まれた。セフォラはまた、IGKが準備していたサロン用のヘアジェルを却下し、代わりに家庭用のココナッツクリームジェルをプッシュした。過去にセフォラと組んでBeccaをドラッグストアブランドから高級ブランドに変身させ、エスティローダーに2億ドル(約223億円)で売却した経験を持つフィンガーは「(セフォラは)イノベーションをとことん追求する」と言う。

商品の売り出し方においても、セフォラの影響力は大きい。セレブリティ御用達のヘアスタイリスト、ジェン・アトキンが立ち上げたヘアケア用品ブランド「OUAI」(ウェイと発音)は、当初アトキンの名を表に出すつもりはなかったが、セフォラがパッケージに名前を入れるように説得した。また、今年2月にOUAIが泡状のドライシャンプーを発売した際にも、セフォラはハウツー動画やインスタグラムのコンテンツの制作に協力した。OUAIの2017年の年商は2000万ドル(約22億円)以上を見込んでいる。

同社の共同プレジデントを務めるディアナ・カンガスは言う。「セフォラは小規模ブランドのことをよく理解しています。ブランドを成長させる方法が、セフォラのDNAに組み込まれているのです」

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事