「5G革命」の先端を走るフィンランドの小都市、オウルの実力

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次世代のモバイル通信規格、5Gは通信分野に巨大な変化を引き起こそうとしている。その「5G革命」の中心となりつつあるのがフィンランドの人口約20万人の都市、オウルだ。
 
オウルが5G革命の先端を突っ走っているのには理由がある。この町にはシリコンバレー並みの優秀な人材と資金、そして企業のエコシステムがそろっている。オウルのイノベーションを牽引するのはノキアだ。ノキアの本社はヘルシンキ郊外のエスポーにあるが、無線工学に強いオウル大学があるこの都市に、R&D拠点を置いている。

ノキアは2014年にハンドセット事業をマイクロソフトに売却したが、マイクロソフトはスマホの製造に本腰を入れなかった。マイクロソフトは2016年にオウルにあったハンドセット事業を解体し、数千人の無線エンジニアや専門家が解雇された。
 
その後、フィンランド政府は大量解雇の影響を最小限にとどめるべく、資金を投入し、スタートアップ促進政策をとった。「政府はこの国がイノベーションのパイオニアとなり、先頭を走ってほしいと願っている」とフィンランドの運輸・通信大臣のアンネ・ベルネルは言う。
 
「どちらかと言えば保守的な町だったオウルがスタートアップの聖地になりつつある」と地元のベンチャーキャピタルButterfly Venturesの共同創業者Juho Riskuは言う。
 
オウルに拠点を構えるハイテク系スタートアップは数百社。その多くがノキアの流れを汲んだ無線工学関連だ。「この町ではほとんどのICT製品がハードウェア関連で、特に小電力の無線技術が多い」と、NPO団体BusinessOuluのJanne Mustonenは言う。
 
その一つがIoTウェアラブルの設計、エンジニアリング、製造を行うHaltianだ。同社の従業員のほとんどがノキアの出身で、CEOのPasi Leipäläもかつてノキアのエマージングプロダクツ部門の主任を務めていた。

オウルには「オウルヘルス」と呼ばれる産学官の共同プロジェクトがあり、世界で初めて病院内に5Gネットワークを構築した。さらに、町の全域に5Gのテストネットワークが張り巡らされており、誰でも試せるようになっている。
 
政府の主導で5Gネットワークを導入する例は世界でも珍しい。「フィンランドはこの分野でのパイオニアになろうとしている」とベルネルは豪語する。「フィンランドは小さな国なのでプラットフォームの構築に関する交渉も進みやすい」と投資会社TekesのSoiniは述べた。

編集=上田裕資

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