「がんばらない経営」で成長を続けるケーズデンキの社員第一主義

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ずっと気になっている企業がある。競争激化が続く家電量販店において、「がんばらない経営」で成長を続けるケーズデンキだ。

私は普段、390万件の社員クチコミと評価スコアが集まるVorkersの「働きがい研究所」で、調査レポートの集計と執筆を行っている。Vorkersは、企業や組織に1年以上在籍した社員・元社員による社員クチコミサイトで、去年発表した「残業と株価の相関関係」では、株価の上昇率とクチコミによる残業時間の関係性を分析した。

結果としては「残業時間が長いほど株価上昇率が高い」という相関関係が見られたのだが、残業が短くても株価が上がっている企業はどんな働き方をしているのだろう……と思い「残業30時間以下」の企業に絞って株価上昇率ランキングを出した。そこにランクインしたのが、ケーズデンキを運営する「ケーズホールディングス」である。

ネットショップの台頭により、「家電量販店で実物を見て、ネットで買う」といった“家電ショールーム”としての利用も増え、スマホですぐに最安値を検索できる時代において、株価を上げ続けていくことは容易ではない。しかも、社員に長時間労働を強いらずに、である。

ケーズホールディングスが5月に発表した2017年3月期の連結決算は、3期連続の増収増益。これはもう、書かずにいられない。

「がんばらない経営」とは何なのか? がんばらないことがもたらす強みとは何なのか? 社員の声から探っていきたい。

残業なし、ノルマなし

まずクチコミを見て驚くのは、「がんばらない経営」の現場への浸透である。ノルマを課さない、残業をさせないといった、社員に「無理をさせない」経営方針が徹底されていることがわかる。

「会長をはじめ末端の管理職まで、がんばらない経営ということで無理な営業ノルマ、長時間の残業をさせない企業風土ができている。他の同業他社と比較しても、コンプライアンス重視の経営方針(販売、男性)」

「無理・無駄・ムラを省いた、効率的な運営が特徴。販売員にノルマがなく、販売金額に対しての叱責もなく、ノビノビとした企業文化(販売、男性)」

「無駄、無理をしないという理念もあり、残業は店舗内の社員平均10時間以内(大型店の場合)。チームワークよく、できる限り時間内に業務を終わられるように、という雰囲気がある。個人的な業務以外は遅番の方に引き続き、早番の方はほぼ定時で帰ることもよくある。サービス残業はしてはいけないと徹底している。残業した場合は「残業許可書」に部門長のサインが必要である(販売員、男性)」

「入社の理由は明確な経営理念があったから。がんばらない経営は決して無理をしないという基本的な考え方であり、それが創業当時から変わっていないことが入社してからも感じ取れた。特にこの業界だとありがちなノルマを追及されるということもほとんどない。もちろん店舗予算、個人予算の目標はあるが達成できていないからといって叱責されるようなこともあまりない(係、男性)※」※九州ケーズデンキへのクチコミ

「がんばらない経営を実行し、無駄なことはせず有意義なことだけをしていこうという文化がある。またお客様第一のための社員第一との考えがあるのでノルマはありません(販売、男性)」
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文=恵川理加

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