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世界37カ国、700万人が愛読する経済誌の日本版

ジョシュ・バーシンと麻野耕司(photograph by Michael Short)

働き方改革によって、長時間労働の是正が進みつつある日本。だが、それだけでは従業員エンゲージメントは高まらないという。

企業が真っ先に取り組むべきことは何か。リンクアンドモチベーションの麻野耕司とバーシン・バイ・デロイトのジョシュ・バーシン、2人のHRスペシャリストが挙げるのは、「データの取得と活用」だ。


麻野:「今、世界のHR業界のキーワードは何か」と、問われたとすれば、その答えははっきりしている。「従業員エンゲージメント」だ。従業員エンゲージメントとは、「企業と従業員の相互理解・相思相愛度合い」を意味し、会社への愛着や仕事への情熱を高めようとする考え方だ。

OECD等の各種調査が明らかにするように、日本の従業員エンゲージメントは、先進諸国と比べ、著しく低い。その一方で、早くから従業員エンゲージメントに注目が集まっていたアメリカは、日本の数歩先を行く“HR先進国”。なぜ、アメリカでは、従業員エンゲージメントが重要視されるようになったのだろうか。

バーシン:従業員エンゲージメントは、かつて、実態を伴わないただの“バズワード”とみなされていた。転機が訪れたのは、2008年。フェイスブックやリンクトインといったSNSが台頭し、転職活動のハードルが急速に下がった。企業が、従業員エンゲージメントに注目せざるを得ない状況が生まれたのだ。

麻野:一方、日本では従業員エンゲージメントという考え方は、それほど普及していない。なぜなら、日本企業は、「終身雇用・年功序列型の人事制度」だったため、経営者は「従業員は放っておいても働き続けてくれる」と信じてきた。そのため、従業員のエンゲージメントを高める意識は希薄だ。

バーシン:世界的に見ても、日本企業による従業員の働かせ方には、問題があると言わざるを得ない。給与増額の交渉、ストライキの実行もできず、長時間労働を強いられる。誤解を恐れずに言えば、日本企業で働く従業員は、まるで“マシーン”だ。

麻野:現在では、「働き方改革」によって、日本企業でも「労働時間の適正化(ワークタイムコントロール)」が進み、長時間労働の問題は改善されつつある。しかし、それだけでは社会的に失敗だったとみなされている「ゆとり教育」のような、「ゆとり労働」で終わってしまう可能性が高い。今後の「働き方改革」は、「労働時間の適正化(ワークタイムコントロール)」から「労働生産性の向上(プロダクティビティ)」、そして「労働意欲の向上(エンプロイーエンゲージメント)」、つまり従業員エンゲージメントを高めることへと、テーマを移していくはずだ。

バーシン:従業員エンゲージメントが高まらない理由は、主に2つ。まずは、(1)ミドルマネジャーによるマネジメントの問題。プレイヤーとして優れた業績を上げ、昇進しても、マネジメント業務をうまくこなすことはできない。結果、現場の混乱が生まれ、従業員エンゲージメントを下げる。

そして、(2)従業員エンゲージメントに関して取得されるデータの「量」と「質」の問題だ。特に問題なのは、その「質」。実質的に、「誰が会社に対してエンゲージメントしているのか、していないのか」のみを調べている調査があまりにも多い。こうした質の低いデータでは、有効な組織開発を行うことはできない。会社で働くことにどんな価値を見出しているか、自分のキャリアのために会社でどんな経験をすることを望んでいるか。従業員の「意思」や「経験」、さらには「幸福度」など、多様な質問事項が含まれるフラットな調査でなければいけない。

麻野:バーシン氏の指摘した「どんなデータを『取得』するか」という「データ取得」の段階を意識していることは、良い調査の大前提。重要なのはその次にある「どのようにデータを『活用』するか」という段階だ。現在、多くの企業は調査を実施するものの、組織開発に活かさずに終わっていることが非常に多い。

「会社全体だけではなく部署ごとのデータを」「経営陣や人事だけではなく現場が」「一年や半年のスパンではなく、月次や週次の頻度で取得する」ことで、データ活用に向けたPDCAサイクルが、初めて回り始める。

バーシン
:麻野氏が指摘する考え方を背景に、アメリカでは、毎月・毎週といった短い頻度で調査を行う「パルス調査」の実施が本格化。こうした調査が、次世代の主流になるのは、間違いない。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=マイケル・ショート

 

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