カンヌの受賞歴から見える、映画界に根付く男女格差

2017年カンヌ映画祭で監督賞を受賞したソフィア・コッポラ(中央)と監督作「The Beguiled」の出演者たち

一度耳にして以来、忘れられない数字がある。

フランスで最も権威ある国立映画学校「フェミス」では、卒業時、男女の学生はほぼ半々。だが、実際に映画監督として活動している女性の割合となると、その数字は24%にまで下がる、というのだ。

つまり、映画監督を目指す女性は男性と同じだけいる。だが、そこから先に“目に見えない何か”があり、その数はぐっと減ってしまう。

これだけではない。毎年、カンヌ映画祭の時期になると、パルムドールを受賞した女性は70年の歴史のなかでも、ジェーン・カンピオン一人でしかない、ということが度々話題に上る。

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パルムドール受賞者をはじめとするカンヌにゆかりのある監督たち。ここでも女性はカンピオン(右から6番目)のみ

今年のカンヌ国際映画祭でソフィア・コッポラが監督賞を受賞したが、こちらも「史上2人目の女性」。アメリカに目を向けてみても、アカデミー賞の監督賞にノミネートされた女性もわずか4人──。

この理想と現実の間にあるものとは、何なのか。

グローバル・ラグジュアリー・グループ「ケリング」は、映画界で働く女性の地位向上を目指す「Women in Motion(ウーマン・イン・モーション)」プログラムを3年前からカンヌ国際映画祭で開催している。

監督や俳優といった“カメラの前”に立つ女性だけでなく、美術スタッフや照明スタッフといった“カメラの後ろ”に立つ女性たちにも光を当て、映画界で働く女性を取り巻く諸問題について多くの人と共有しよう、という試みだ。これまで、ジョディ・フォスターやジュリエット・ビノシュ、スーザン・サランドン、といった女優たちがカンヌ映画祭で開催されるWomen in Motionのトークに招かれ、自身の経験を語ってきた。

今年のカンヌ映画祭では、女優で監督のロビン・ライト、女優のダイアン・クルーガーやサルマ・ハエック、監督のコスタ=ガヴラスらが同プラグラムのトークで想いを自ら語った。

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映画監督のカウテール・ベン・ハニア(左)と女優のサルマ・ハエック(右、Venturelli/Getty Images for Kering)

サルマ・ハエックは、何度も「暴力的」という言葉を使用していたのが印象的だった。

“目に見えない暴力”として挙げていたことの一つに、男女間の給料格差がある。たとえば、女性監督の平均給与と男性監督の平均給与の間には42.3%もの差がある、というデータもあるほどだ。

ケリングのプレスオフィサーの女性は、「こうした格差は少しずつでも変えていかなけれないけない、なくさなければいけないもの」と力を込める。

長年映画界に貢献した女性に与えられる”Women in Motion アワード"は女優のイザベル・ユペール(写真中央)が受賞。さらに、イザベル・ユペールが才能ある若手女性監督を選出する「ヤング・タレント・アワード」は、パレスチナの女性監督マイサルーン・ハムードが受賞している。

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1本映画を撮ることができても、2本目、3本目と映画を撮り続けるのは本当に難しい。

「微力ではあるけれど、才能ある若い女性たちが、希望を持って、自分のプロジェクトを信じて進められるようになれれば」と前出のプレスオフィサーは言う。

カンヌ映画祭でスタートしたWomen in Motionの取り組みは、他の国でも広がりを見せており、今月23日には東京で行われるフランス映画祭の関連企画としてイザベル・ユペールが登壇する予定だ。

「映画における女性」について、皆で考えよう、という動きが広まっている。

*出典:フランスのCNC(国立映画センター)ほか

文=古谷ゆう子 写真=Getty Images

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