買収によってメイクアップ部門の強化に注力してきたエスティローダーだが、今後はスキンケア部門のてこ入れを図る計画と見られる。
デシエムはユニークな製品展開で高い人気を博しており、国際市場においても存在感を高めている。その同社と資本関係を築くことで、エスティローダーはデシエムの人気から利益を得ることができると同時に、国際的なスキンケア市場でのシェア拡大を実現する足掛かりを得ることになるだろう。
デシエムの魅力
カナダ・トロントで2013年に創業したデシエムの特徴は、マルチブランド戦略だ。垂直統合型の体制により、研究所から製造、電子商取引、小売店舗、マーケティングインフラまで、サプライチェーンにおける全てを自社で管理している。この体制が、市場が発する何らかの「合図」に迅速に対応し、革新的な製品を生み出し、顧客に同社独自の製品を提供することを可能にしている。
同社がこれまでに立ち上げたブランドは、10に上る。中でも各国で高い人気を得ているのが、スキンケアの「ジ・オーディナリー(The Ordinary)」と、エイジングケアの「NIOD」だ。
価格帯の異なるブランドを幅広く展開する同社は、自社経営の複数のブランドを扱う店舗のほか百貨店、その他の小売店での販売、インターネットやテレビでの通信販売を行っている。主な市場は米、英、カナダ。特にミレニアル世代の消費者や、科学に基づいた機能性を求める消費者に大人気となっている。
エスティローダーが得る利益
エスティローダー全体の売上高に占めるスキンケア部門とメイクアップ部門の割合は、いずれも40%程度。スキンケアがわずかに低い水準となっている。ただ、その重要性を考えれば、同社がミレニアル世代と多様な顧客ベースを引き付ける力を持ったスキンケアブランドに出資を決めたことは、理にかなっているといえる。メイクアップ化粧品では、すでにベッカ(Becca)やトゥーフェイス(Too Faced)を傘下に収めている。
米調査会社トレフィス(Trefis)の推計によると、世界のメイクアップ市場におけるエスティローダーのシェアは約7%。2023年末までに8%となることが予想されている。