出席者は半数が外国人で半数が日本人。国会議員や地元議員、世界的カジノ運営会社の人々や機器メーカーらが集まった会場で、IR(統合型リゾート)の日本導入に向けての課題が話し合われた。
外国人らが最も狙っているのはIRの経営権だ。しかし「この分野では、結局は日本企業が主導権を握ることになる。アメリカの企業は落胆することになるだろう」と、カジノ関連のコンサル会社スペクトラム・アジアのCEOであるPaul Brombergは言う。
カジノ運営の経験が無い日本企業がこの分野で成功を収められるのか、という声も出ているが、モルガン・スタンレー・アジアのPraveen Choudharyは「香港のギャラクシーエンターテインメント社も、カジノ運営の素人だったにも関わらず成功を収めた。日本企業にもできるはずだ」と述べている。外国企業は「経営権を握ることや筆頭株主になることに固執するべきではない」というのが彼の持論だ。
しかし、日本政府が年内にIR推進法案を通そうとしている一方で、問題は山積だ。「日本はより突っ込んだ議論に入るべきだ」とPwCコンサルティングのシニアマネージャーの寺田匡宏は言う。寺田は今回話し合われた議題が一般論ばかりだったことを「不満だ」とし、「より現実的な議論を始めなくてはならない」と主張している。
日本では国民の多くがギャンブル依存症への懸念からカジノに反対だ。ラスベガス・サンズのジョージ・タナシェヴィッチ社長は今回のコングレスで、ギャンブル依存症に関するプレゼンテーションを行った。彼はシンガポールのマリーナベイ・サンズのCEOでもあり、同国がギャンブル依存症を懸念する国民の反対を押し切ってIRを合法化した経緯をよく知っているため、この懸念を払しょくする努力がいかに大事かを理解している。
6月にマニラの複合型リゾートで起きた発砲事件の容疑者がギャンブル依存症だったことも、日本のIRにとって逆風となっている。「この事件はカジノ反対派にとって大きな追い風になる」とBrombergは言う。
「カジノがあるとこのような事件が起きる、依存症になって借金を抱え、何の支援も受けられなかった男が事件を起こす、と主張するだろう」
そんな状況下で、自民党はギャンブル依存症対策法案について野党の合意を得られず、与党単独での提出に踏み切った。日本政府がIRに対する国民の反対にどう対処するかを決めるのは、まだ先のことになりそうだ。
一方でIR推進派はカジノに対する国民の反感は自然と消え去るだろうと考えているように思える。しかし、それは妄想の世界の話でしかありえない。