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2017.06.19 18:00

「アルバム」が音楽業界から消えるかもしれない未来

2017年のビルボードミュージックアワードにて。アーティストのドレイク。 (Photo by Allen Berezovsky/Getty Images for Fashion Media)

アルバムというフォーマットは、数十年にわたり音楽業界で最も重要なフォーマットだった。シングルのリリースはアルバムを宣伝するためのものであり、アーティストの成功もアルバムの販売枚数で測られてきた。しかし、この10年ですべてが変わり、アルバムという概念を変えようとするアーティストが出てきた。

ドレイクは2015年、本来ならアルバムと呼ぶべき楽曲のコレクション「イフ・ユーアー・リーディング・ディス・イッツ・トゥー・レイト」と「ホワット・ア・タイム・トゥ・ビー・アライヴ」を、「ミックステープ」という名前でリリースした。

ラッパーがアルバム発売の合間にミックステープをリリースするのは珍しいことではないが、この2枚についてはミックステープというよりもアルバムという扱いで対応された。2枚ともレーベルによって発表され、その直後から購入できるようになった。サンプルの権利関係の許可を取り、関係者全員をクレジットするなど、アルバムをリリースする際に行われる手続きが取られていたのだ。この2枚は共にビルボード200で初登場1位を獲得し、アメリカだけで合計300万枚以上が売れた。

ドレイクはその後2016年に従来型のアルバム「ヴューズ」を発売したが、数か月前にリリースしビルボード200で1位を獲得した「More Life」についてはアルバムではなく「プレイリスト・プロジェクト」と呼んでいる。このフレーズも初めて使われたものであり、リリース当初はストリーミングでしか聴くことが出来ず、現在の音楽業界でストリーミングがいかに重要であるかを示す事例となった。ビルボード200においてアルバム、ミックステープ、プレイリスト・プロジェクトという3つのカテゴリで1位を取ったのはドレイクだけだ。

ドレイクに追随しているのが新鋭のヒップホップ歌手ヴィック・メンサで、最近リリースした4曲収録のレコード「The Manuscript」を「カプセル」と呼んでいる。他のアーティストがメンサに続いて「カプセル」を発表する日も近いかもしれない。

今後もこのような傾向が続くとすれば、音楽業界はアルバムというコンセプトを考え直さなくてはならないかもしれない。音楽業界において売上の上がるサービスや分野が移り変わり、人々が音楽を聴く形が増えるにつれて、これまで常識だった固有名詞が変わっていく可能性は十分にある。その流れをけん引するのがヒップホップのアーティストたちだ。

編集=上田裕資

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