ビジネス

2017.06.19

顧客を熟知したベゾスが見るホールフーズ「買収効果」とは何か

アマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾスCEO(gettyimages)

ジェフ・ベゾスはそのキャリアを通して、消費者が何を求めるかを予測することで頭角を現してきた。

アマゾン・ドットコムを開業したときには、さまざまな種類の本を安価に購入したいと考える経済的に余裕がある「本好きの人たち」に注目した。

アマゾン・プライムを立ち上げたときには、商品が短時間で手元に届くことを実現する限り、顧客は「無料」配送のために別の料金を支払うことに応じるだろうと考えた。

米紙ワシントン・ポストを買収したときには、ケーブルテレビのニュースが提供する以上のジャーナリズムを求める裕福な「ニュースジャンキー」(その日の主なニュースを全て知っておかないと気が済まない人たち)たちの中に価値を見出した。

いずれの場合においてもベゾスは、これらのビジネスがカバーしてきた領域を従来から大幅に拡大し、新たなものへと変化させてきた。そして、各社の顧客をアマゾンの顧客層に引き入れると同時に、新たな層を開拓してきた。

そのベゾス率いるアマゾンは6月16日、自然・有機食品小売り大手の米ホールフーズ・マーケットを137億ドル(約1兆5100億円)で買収すると発表した。これにより、ベゾスはアマゾンの顧客である可能性が高い顧客層を「新たに」手に入れることになる。恐らく他の誰がホールフーズを買収した場合よりも、獲得の利点は大きなものになるだろう。

買収の理由は「顧客層」

ただ、有機食品を扱うことで高い評価を得たホールフーズはその価格設定から「ホール・ペイチェック」(給料の全額)などと呼ばれるようになり、すでにかつての人気を失っている。同社が扱う商品の多くはアマゾンで販売される場合よりも高額で、ホールフーズはその価格設定の正当性を消費者に納得させることに悪戦苦闘してきた。

また、消費者はホールフーズ以外にも、農家の直売市やその他の多くの店で有機食品を買うことができる。皮肉なことに同社は、日本の自動車メーカーがかつてデトロイトの自動車メーカーに車の品質向上を促したように、同業他社に「戦力強化」を余儀なくさせてきたのだ。
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編集 = 木内涼子

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