テクノロジー

2017.06.18 12:30

イーロン・マスクが描く「火星移住」計画 100万人規模を視野に

Pavel Chagochkin / Shutterstock.com

スペースXの創業者兼CEOであるイーロン・マスクは、2012年に打ち出した火星移住計画の最新状況について語った。マスクは「人類が地球にとどまっていたら滅亡は避けられず、他の惑星への移住が生き残る唯一の方法だ」と信じている。

しかし、なぜ地球から近い月ではなく、火星でないといけないのか。この点について、マスクは次のように説明している。

「月は惑星よりもはるかに小さい上に大気がなく、資源も火星に比べて乏しい。また、月の1日が28日であるのに対し、火星は24.5時間だ。自給自足の文明を築く上で、火星の方が月に比べてはるかに適しているのだ」

マスクによると、火星に住むと楽しいことがあるという。「火星の重力は地球の37%しかないため、重いものを持ちあげて飛び跳ねることができる」と彼は言う。火星への移住を実現する上で欠かせないのが、コストの大幅な低下だ。

「アポロ方式では、低く見積もっても1人当たり100億ドルのコストが掛かる。火星へのチケットが100億ドルもしたら、自給自足の文明を築くことは不可能だ。スペースXは米国の平均的な住宅価格である20万ドルまでコストを下げることを目指す」と彼は言う。

この価格ですら、現状から500万%もコストを下げる必要があるため、実現は容易でない。マスクの計画はこうだ。まずは、宇宙船を再利用できるようにし、次に軌道上で燃料補給を行う。そして、最終的には火星まで燃料を輸送しなくても済むよう、火星で燃料を製造する。

東京—NY間も25分で飛行可能になる

スペースXは、昨年9月に数千万ドルを投資して、一度に100人を輸送できる宇宙船の開発に着手した。マスクの試算では、自給自足のコロニーを作るには最低100万人を移住させる必要があるため、この規模の宇宙船だと40年から100年はかかることになる。

火星移住計画の第1ステップは、宇宙船を火星に送ることだ。スペースXは、2020年にドラゴン宇宙船を火星に向けて打ち上げる予定だ。当初の打ち上げ予定は2018年だったが、遅れている宇宙ステーションへの有人ミッションと、大型ロケット「ファルコンヘビー」の開発に専念するために後ろ倒しになった。

惑星間輸送システムは、地球上での活用も期待されている。「超高速輸送システムに対する需要はあるだろう。ロケットの騒音は凄まじいため、市街地から離れた場所で離発着させる必要があるが、貨物を地球上のどこにでも最大45分で届けることが可能になる。例えば、ニューヨークの沖合20-30マイルに洋上プラットフォームを作れば、東京まで25分で行くことができ、大西洋なら10分で横断できる。ロケットに乗っている時間よりも、発射場に行くまでの時間の方が長いことになる。地球での使用が主目的ではないが、大きな可能性を秘めている」とマスクは言う。

マスクによると、全てが順調に進めば、10年後には最初の移住者を火星に送り込むことが可能だという。彼は、どれだけ時間が掛かろうと、火星に文明を築くことが彼とスペースXにとってのビジョンであり続けると強調し、次のように締めくくった。

「火星移住には大きなリスクが伴い、掛かる費用も膨大だ。我々の計画が失敗する可能性も十分あるが、ベストを尽くし、できる限りの成果を挙げたい」

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事