しかし、どちらもすぐに状況が悪化した。第一印象は良かったものの、新マネジャーはいずれも技術的知識・能力に欠け、周りとうまく協働できなかった。どちらの場合も大きな問題に発展し、マネジャーは1年以内に退職して、組織に深刻な混乱が生じてしまった。
誰をマネジメントの役割に採用するかによって、結果は大きく変わる。全てのレベルのマネジャーが、経済的・感情的に従業員の生活を左右する力を持っている。この点を指摘した力強いメッセージとして私が以前から気に入っているのが、米世論調査会社ギャラップの最高経営責任者(CEO)を長く務めてきたジム・クリフトンの次の言葉だ。
「ビジネススクールではおそらく絶対に教わらないことがある。仕事をする中で唯一最大の決断とは、誰をマネジャーに任命するかだ。誤った人材を選んでしまうと、その誤った判断を解決する手段はない。報酬も、諸手当も何も効果がないのだ」
それでは、誤った人材の採用をどうすれば防げるのか? 少なくとも最良の人材を採用する可能性を高めることはできないのか?
採用プロセスに多くの段階があることはもうお分かりだろうが、指針としてあらゆる場合に役に立つと私が信じる1つの原則がある。私はこれを「採用の黄金原則」と呼んでいる。
その原則とは、「好感度やカリスマ性、性格の力に過度に左右されず、その代わりに具体的で検証可能な業績に注目する」だ。
私は、可能な場合は常に内部からの採用を好んできた。より広範な従業員層に正しいメッセージを送れるし、採用マネジャーとして候補者の実際の仕事ぶりを、より長い時間かけて(時間単位ではなく年単位で)観察できる。
しかし、適切なスキルの組み合わせを持つ人材がたまたまおらず、内部採用が不可能な場合ももちろんある。そのときは、より広い層を対象として採用活動を行う他に選択肢はない。