アップルが「スマートホーム規格」をオープン化する理由

(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

アップルが「HomeKit」を発表したのは、2014年の開発者カンファレンス WWDCでのことだった。HomeKitとは、iOS機器でスマートデバイスを管理するための開発者向けプログラムのことだ。しかし、MFi(Made for iPhone/iPod/iPad)製品として認証を受けるためには、アップルが認証したチップを製品に搭載し、厳格な審査をパスしなければならないなどハードルが高く、HomeKit普及の足かせとなってきた。

事態の打開を図りたいアップルは、今年のWWDCでHomeKitをアップルの全ての開発者に開放すると発表した。従来はHomeKitの技術を利用できるのはMFiライセンスの保持者に限られていた。また、開発者はラズベリー パイ(Raspberry Pi)やアルドゥイーノ(Arduino)を使ってHomeKitデバイスを作ることができるようになった。製品を商品化する場合には、これまで通りMFi認証を受けなければならないが、それでもHomeKit製品を開発するためのハードルは大幅に緩和されたと言える。

アップルは、HomeKitの仕様も変更し、認証チップを製品に搭載しなくてもソフトウェアを使って認証を受けることができるようにした。今後は、ファームウェアを更新するだけで良いという(既に認証チップを搭載したメーカーはこの変更に不満を抱くかもしれないが)。

これまで、メーカーの多くは、HomeKit対応製品の開発が困難であると不満をもらしていたが、今回発表された変更により障害の多くが取り除かれた。

この方針転換の背景には、音声アシスタント「Siri」を搭載したスマートスピーカー「HomePod」のリリースがある。HomePodは6個のマイクを搭載し、部屋のどこからでも音声でコマンドすることができる。

スマートスピーカー市場ではアマゾンとグーグルが先行している。開発者にとっては、厳しいセキュリティ要件を課すアップルよりも、これら2社のスマートスピーカーと統合させる方が格段に楽だ。しかし、IoT機器は急速に普及が進む一方で、セキュリティの脆弱性が大きな課題となっている。アップルの狙いが、HomeKit製品の開発プロセスを簡素化し、強固な暗号化技術を武器にライバル2社を追撃することであることは明白だ。

編集=上田裕資

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