テスラ、危険な工場環境を放置 遅過ぎたマスクの「本気」表明

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マスクは声明の中で、全ての負傷事故についての報告を義務化すると述べている。ただCEOが労災の報告を受けるのは標準的な慣習であり、特に注目すべき取り組みではない。

マスクはまた、負傷した従業員たち全員と面会し、その従業員と同じ業務を遂行するとも表明。これは業務の詳細な理解が目的とみられる。良い習慣ではあるものの、CEOがやるべきことではない。マスクはこう提案することで、状況を本当に理解できるのは自分しかいないとほのめかしている。

安全性は複雑な問題だ。安全な勤務環境の実現には文化・組織の設計が必要で、スローガンを掲げるだけでは永続的な解決は見込めない。問題解決は、工場の基本的な設計と、従業員が意見を言える環境作りから始まるのだ。

負傷事故を起こす前に管理者が環境の悪化に気づくには、シフト終了時に「今日はどれくらい安全でしたか?」という質問をする方法がある。

「今日は安全な日でしたか?」よりも「今日はどれくらい安全でしたか?」と聞く方が良い。従業員にとっては「安全だ」から「安全ではない」に変えるよりも、5段階評価の5から4に変える方が容易だからだ。

米国では高速道路での死亡事故が近年増加傾向にあり、2016年の死者数は4万人を超えた。私が住むフロリダ州では、怒りっぽく不注意な高齢運転者の影響で、死者数が全国平均より40%多い。より安全に運転できる車があれば、命が救われるだろう。

より安全性の高い自動運転車が何千人という命を救う一方、安全でない工場で安全な車を製造するのは困難だ。私たちは、従業員をバリューチェーン(価値連鎖)の中での最初の顧客として扱い始めるべきなのかもしれない。

編集=遠藤宗生

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