ライフスタイル

2017.06.13 15:00

快適なのに品格もある、「いいとこ取り」のビジネスシューズ

ブラックとコーヒーブラウン。ブラウンのトウはアンティーク風の仕上げ。他にプレーントウ、Uチップ、ウイングチップタイプも揃っている。シューズ各¥32,000)

ブラックとコーヒーブラウン。ブラウンのトウはアンティーク風の仕上げ。他にプレーントウ、Uチップ、ウイングチップタイプも揃っている。シューズ各¥32,000)

ファッションディレクターの森岡 弘とベテラン編集者の小暮昌弘による対談連載「紳士淑女の嗜み」。今回はその特別編として、「世界と闘う日本ブランド」企画をお届けする。

欧米に負けない“つくり”と日本ならではの“感性”の融合が見せるジャパンプロダクトの未来とは─。スーツ眼鏡に続き、今回はシューズの話。


小暮昌弘(以下、小暮):最近、レザーシューズでも「ハイブリッドシューズ」と呼ばれるジャンルが確立しつつありますね。

森岡 弘(以下、森岡):レザーアッパーにスニーカー的なソールをドッキングさせたコンフォートタイプです。この「ランウォーク」の靴もある意味、同じジャンルに入るかもしれませんが、実はこれまでのものとは違うと思うんですよ。

小暮:そうですね。一般に言うハイブリッド靴はドレスシューズ側から見た快適な靴。それに対してこの靴はスポーツシューズ側から見たドレスシューズ。でも見た目は普通のドレスシューズに近い。

森岡:ビジネスマンのパーソナルスタイリングもよく担当していますが、「こういう靴を探していたんだ」と膝を打つ人が、相当いらっしゃると思いますよ。スタイリストの僕でも履きたいと思う、品格ある雰囲気です。内羽根のストレートチップはビジネスマンが絶対持つべき靴のひとつですからね。正式な席でも履いていけます。それでいて快適だから、走れちゃいそうです。

小暮:「ランウォーク」のブランド名もそれが由来です。これまでのハイブリッドシューズは歩きやすさをアピールするデザインのものが多かったですね。

この靴は逆方向。なんでもない踵に見えるヒールの中にもクッション性と反発性を併せもつ「スピーバ」と「GEL」が内蔵されています。中敷にもランニングシューズで採用された「オーソライト」が使われているので快適。外見は普通のレザーソールに見える。

森岡:そうなんですよ。いいスーツを台無しにしてしまうと言っては言い過ぎかもしれませんが、機能を見た目で表現したハイブリッドシューズが主流でした。でもこれは機能性を隠し味にしている。まさに日本的な配慮が感じられる靴であり、紳士が持つべきアンダーステイトメントを感じるドレス靴です。

小暮:アッパーの素材も光沢があり、高級感も感じます。「キップ」と呼ばれる牛革を姫路にあるタンナーで鞣なめしているそうです。甲部のシワも入りにくいほど、しなやか。もちろん縫製も国内の優秀な工場で。この履き口の楕円の感じは、欧米の老舗靴にも引けを取りません。

森岡:レザーソールに見えますが、ソール全体もラバー素材。日本はアスファルトが多いですから、たくさん歩くビジネスマンには重宝しますね。このモデル、ウイズ(靴幅)が3Eと言う幅広の日本人に合うものですが、とてもスマートに見えます。こういうところも大事なんです。さらに軽量なので足への負担が少ないんです。

小暮:この靴を企画した方に話をお聞きしたことがありますが、ラスト(靴型)をミリ単位で削って、履きやすさと見た目のよさも追求しているそうです。まだ限られたショップですが、パターンメイドもスタートしていて、アッパーの素材がいくつか用意され、なかにはフランスの名革「デュプイ」やスエードの素材もあります。360通りの靴がつくれ、しかも納期は1か月と、とてもスピーディ。

森岡:実用性とデザインの両立。おいしいところ取りしても見た目がダメなモノも日本にはまだまだ多いのですが、これは仕上げまでこだわっている。これこそ日本流のビジネスシューズのお手本だと思います。

パターンメイドのモデルは、さらなる満足感を求めるエグゼクティブの方には嬉しいサービスですね。そういったことまできちんと考えているのも日本らしいところ。座布団3枚あげます。

小暮:座布団、いただきました(笑)。



森岡 弘(左)◎『メンズクラブ』にてファッションエディターの修業を積んだ後、1996年に独立。株式会社グローブを設立し、広告、雑誌、タレント、文化人、政治家、実業家などのスタイリングを行う。ファッションを中心に活躍の場を広げ現在に至る。

小暮昌弘(右)◎1957年生まれ。埼玉県出身。法政大学卒業。1982年、株式会社婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。83年から『メンズクラブ』編集部へ。2006年から07年まで『メンズクラブ』編集長。09年よりフリーランスの編集者に。

文 = 小暮昌弘 スタイリング=森岡 弘 編集=高城昭夫 写真=Masahiro Okamura

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