一方、同じく米国でコワーキングスペースを運営するインダストリアス(Industrious)の共同創業者でCEOのジェイミー・ホダリは、「商業用物件の市場全体が、大きな転換期にある」と指摘する。
インダストリアスは起業から一定期間が経過した企業へのサービスに重点を置いており、主な顧客は「全ての従業員が快適に働けるようにオフィスをもう一段階アップグレードしたい」と考える企業だ。顧客リストには、配車サービスのリフトや音楽ストリーミングサービスのスポティファイ、高級ホテルチェーンのハイアットなどの有名企業の名が並ぶ。
「企業は規模にかかわらず、従業員の満足度と生産性の向上のためには職場への愛着心を高めるような環境作りが必要だと認識するようになっている。だが、これは企業にとって実現が難しい問題だ。一か所のオフィスに配置する将来的な人員の数が読めなくなっていることに加え、長期的な賃借契約が企業の業績に与えるインパクトは増大している」とホダリは語る。
インダストリアスはまた、1978年から約40年間にわたり、オーストラリアのサーブコープ(Servcorp)が開拓してきたニッチな高級レンタルオフィス市場にも注目している。
サーブコープは小規模企業や起業家向けに、各国の大都市に約150か所の拠点を構え、手頃な料金でエグゼクティブ・スイートやバーチャル・オフィスを提供してきた。同社はここ数年で1億ドル以上を投じ、事業拡大に向けた技術面の強化に注力している。ビーコン技術による位置情報を利用したシステムを開発・展開中で、同システムを利用すれば会員は、共有デスクの空き状況を簡単に把握できるようになる。
北米での事業拡大を狙うサーブコープの最高執行責任者(COO)によれば、同社は2018年には北米市場での知名度を大幅に引き上げたい考えだ。さらに、同COOは今後のコワーキングスペース市場について、次のような見方を示している。
「全体として、よりハイブリッドなビジネス・モデルへのアプローチが求められるようになっていくと考えている。単にコワーキングスペースやエグゼクティブ・スイートだけでなく、柔軟性の高いあらゆる職場環境のモデルが求められるようになるだろう」