米大統領の「フェイクニュース」批判が信用できない理由

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私は最近のフェイク(偽)ニュースまん延にうんざりしている。本物のニュースを装ってさまざまな政治勢力から発信される意図的な誤情報やプロパガンダは、日々その数を増している。ロシアから絶妙なタイミングで「デザ(偽情報)」が発信される中、真実を見つけるのは、失われたアトランティス大陸の発見と同じぐらい難しいかもしれない。

こうした情報の混乱を背景に、ロシアの大統領選妨害疑惑や、トランプ陣営との共謀の可能性がますます取り沙汰される中、フェイクニュースが大統領側の自己弁護の中核となっているのは興味深い。

先日の外遊から帰国してすぐ、大統領はこうした姿勢を明確にするメッセージを2件のツイートに分けて投稿した。「フェークニュースメディアが『情報筋によると』などとして氏名を明らかにしない時は…」「…かなりの確率でそのような情報筋は存在せず、フェイクニュース記者によるでっち上げだ。フェイクニュースは敵だ!」

もちろん、大統領の「フェイクニュース」の定義はウィキペディアの定義とはいくぶん異なる。フェイクニュースは主要メディア以外から出てくる恣意的な誤情報やデマのことだが、大統領が注目するのは主要メディアそのもの、つまり自身が敵とみなすCNNやニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなどだ。

壮大なフェイクニュースの陰謀?

危機管理は、組織運営上の最重要課題の一つだ。なぜなら危機とは、組織が自らの存在を脅かすような極度の圧力下にある時に訪れるからだ。個人や組織がどのように立ち向かうかによって、危機が収束するか増長するかが決まることは多い。

選挙中のロシアの干渉や、自陣のメンバーがロシア側と接触していた可能性について情報を得た際、大統領は激怒して直ちに真相究明のための特別委員会を設置することもできたはずだ。しかし反対に大統領が選んだのは、そういった情報に「フェイク」とのレッテルを貼リ続け、メディアの作り話だとはねつけることだった。

しかし考えてみて欲しい。もしこのロシア問題がフェイクで、メディアによる巨大な陰謀に過ぎないとしたら、メディア全体だけでなく、議員、委員会、連邦捜査局(FBI)、米情報機関を巻き込んだ壮大かつ巧妙な陰謀だということになる。
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編集=遠藤宗生

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