IBMが開発の「超高密度半導体」5ナノチップが切り開く未来

(Photo by David Ramos/Getty Images)

IBMが、7nm(ナノメートル)プロセスチップの試作に世界で初めて成功したのは2年前のことだ。そして今回、同社はさらに微細な5nmプロセスチップを実現するための生産プロセスの開発に成功したことを明らかにした。1ナノメートルは10億分の1メートルを意味する。

7nmプロセスチップが、指の爪先ほどの大きさに200億個のトランジスタを搭載できるのに対し、5nmプロセスチップは、同じ大きさに300億個のトランジスタを搭載することが可能だ。

トランジスタの集積密度が高いほど、チップの処理速度が高速になる。IBMによると、5nmプロセスチップは、現在製品化されている10nmプロセスチップに比べて性能が40%向上し、同一性能では75%の省電力化を実現したという。

IBMは5nmプロセスチップの開発に当たって、積層したシリコンナノシートを使ったナノシートトランジスタという新しいタイプのトランジスタを採用した。現行のトランジスタ構造であるFinFETアーキテクチャのゲート数が3であるのに対し、ナノシートトランジスタは4となっている。FinFETは、22nmと14nmのチップで採用されており、7nmプロセスチップでも用いられる予定だ。

IBMリサーチで半導体グループのバイス・プレジデントを務める Mukesh Khareは「FinFETは、幾何学的スケーリングが限界に達している」と言い、半導体業界では新たなアーキテクチャへの移行が進んでいるという。チップの微細化における大きな課題は、リーク電流が増大することだ。

サムスンらも開発に参加

IBMはこれまで10年以上に渡ってナノシートトランジスタを用いたチップ技術の研究を行ってきた。同社は、ナノシートトランジスタの製造に、7nmプロセスチップと同じく半導体の微細化を実現する技術の“極端紫外線リソグラフィ”を用いたという。

IBMは、今回の研究開発をGlobalFoundriesやサムスンと共同で行い、京都で開催された回路技術の国際会議「2017 Symposium on VLSI Technology/Circuits」でその成果を発表した。IBM自身はチップの製造を行わず、GlobalFoundriesとサムスンがライセンスを受けて5nmプロセスチップを製造するオプションを持つという。また、5nmプロセスチップの量産体制は、2020年頃に整う予定だという。
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編集=上田裕資

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