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ドイツ、バーデン=ヴュルテンベルク州ハイルブロン

人口減少、エリート人材不足、大企業依存──日本の地方都市には問題が山積みだ。しかし、そんな問題を既に乗り越えた都市が、実はドイツに数多くあった。その中でも、日本が学ぶべき3つのモデルを紹介する。

第2回は、かつて農産物の集約都市として栄えた
バーデン=ヴュルテンベルク州の都市、ハイルブロンの事例。


食品会社クノールの創業地であることからわかるように、ハイルブロンは農産物の集約都市として栄えてきた。しかし、それは過去の話。いまやハイルブロンは一大産業集積都市だ。

ポルシェやボッシュなどの大手メーカーが研究開発拠点を置き、そこからスピンアウトした起業家が設立した企業群もグローバルサプライヤーとなって地域を潤すまでに成長した。

農業都市から高次な産業集積都市へ。一般的にこの転換には、優秀な人材を輩出して企業に供給する大学の存在が欠かせない。ところが、ハイルブロンには目ぼしい大学がなかった。はたして同市の企業は、どのようにして優秀な人材を確保したのだろうか。ここでこの都市のデータを抱えていた課題をおさらいする。

課題:地域産業を支える人材の輩出拠点となる優れた大学がない
人口:約13万人
主な産業:自電車、機械を中心とした製造・研究開発
立地する主な拠点:アウディの基幹工場・研究開発拠点

ハイルブロンに研究開発拠点を持つアウディは、アーヘン工科大学をはじめ全国の工科大学と提携して人材の供給を受けている。ただ、これも大学頼りであることには違いない。

大学がないなら、いっそ自分たちで人材を養成すればいい。そう考えて新たに教育機関をつくったのが、ディスカウントスーパーのリドル社(Lidl)だ。

同社は店舗経営者育成のため、社員向けに研修センターを設立。それを一般にも開放し、経営人材の育成に努める。日本でいえば、ダイエー創業者中内功が神戸市に設立した流通科学大学に成り立ちが似ている。

育成するのは経営人材ばかりではない。ハイルブロンの商工会議所は、「技術の夕べ」と名づけたイベントを、地元の小中学校で開催。子どもたちにテクノロジーの重要性を教えて、未来のエンジニアを育てている。

大学が来ることを座して待つだけが、優秀な人材を獲得する手段ではない。公的な大学がないなら、民間が率先して人材を育成して内部から輩出すればいい。その柔軟な発想が、産業の大胆な転換を可能にしたのである。

ドイツに学ぶ「ローカル都市の生存戦略」─レーゲンスブルク編


神尾文彦◎野村総合研究所社会システムコンサルティング部長、公共プロジェクト室長、主席研究員。都市・地域戦略、道路・上下水道等の社会インフラ政策戦略、公的組織の改革等の業務に関わり、総務省「公営企業の経営戦略の策定等に関する研究会」委員をはじめ、国・自治体の委員を歴任している。

文=神尾文彦  構成=村上 敬

 

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