南極点到達の型破り社長、名門「探検家クラブ」のメンバーに

日産インフィニティの社長 ローランド・クルーガー(Photo by Bill Pugliano/Getty Images)

大手自動車メーカーの幹部らが「よく運動した」といえば、どこかのカントリークラブでゴルフを1ラウンドすることを指す場合が多いだろう。クロスカントリースキーで、南極点まで1000km近くを踏破するというのは、あまり聞いたことがない。

だが、日産の高級車部門インフィニティの「タフな」ローランド・クルーガー社長は先ごろ、単独での南極大陸横断を達成した偉業を認められ、ニューヨークにある名高いエクスプローラーズ・クラブ(探検家クラブ)の会員に迎えられた。

同クラブのメンバーには、(人類で初めて南極点に到達した)ロアール・アムンゼンのほか、飛行家のチャールズ・リンドバーグ、エドモンド・ヒラリー卿、米国人宇宙飛行士のニール・アームストロングやバズ・オルドリン、マイケル・コリンズなどがいる。

クルーガーは自分の上げた成果を自慢するタイプではない。実際、南極大陸横断を達成したことを、エクスプローラーズ・クラブの会員になるまで公表していなかった。南極点に到達したのは、インフィニティの社長に就任する以前の2012年のことだった。

BMWジャパン社長や三菱自動車・欧州デザイン部門のデザイナー、メルセデス・ベンツの合弁事業「スマート」のデザイナーとして世界各地で仕事をしてきたクルーガーにとって、仕事で赴任することはない南極大陸に行くことは、「子供のころからの夢」の一つだった。

10年をかけて準備

クルーガーは、南極大陸横断を実現するための準備に10年間を費やした。クロスカントリースキーでの遠征に何度も参加して経験を積み、ひもで結んだ自動車のタイヤ3個を引いて歩くなどのトレーニングも行った。

南極大陸に到着後は気温摂氏マイナス37度という厳しさのなか、食料や必要な装備を積んだ重さ約135kgのそりを引き、約965kmの距離を進んだ。絶えず吹き付ける風と、プレッシャー・リッジやクレバスが点在する危険な氷原の上を、装備のトラブルにも悩まされながら目標地点に向かった。そして、出発から50日後、クルーガーは南極点と観測基地に到達した。

クルーガーは当時を振り返り、こう語っている。

「到着すると、数人が観測基地から出てきて私を出迎えてくれた。何と言えばいいか分からなかった。50日もの後、あなたなら何と言うだろう?」

「人生には困難なこと、集中力を途切れさせてはならないことが数多くある。あの時の経験は、仕事にも日常生活にも生かすことができている」

「夢があるなら、それに向かって努力すべきだ。どれだけ困難なものであっても、…どんなに遠くて、寒い場所でも」

編集 = 木内涼子

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