「憧れた米国が中国以下の後進国に」 移民が語るトランプ政権への失望

パリ協定離脱を表明したトランプ大統領 (Photo by Win McNamee/Getty Images)


実はSDGsは投資の世界でも主流になってきている。いわゆるESG投資だ。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を投資の基本方針に据えたものをいう。

100年ほど前から、社会的責任投資の重要性が指摘されており、06年には当時のアナン国連事務総長の発案で、責任投資原則が設けられた。その考え方はSDGsと完全に同期する。だから、ESG投資にもほぼそのまま活かされている。

ESG投資の最大の特色は、「環境問題等のSDGsを軽視して利益のみ追求する企業の価値は、短期的には上昇しうるが持続性がない。反対に、SDGsを重視する企業は、短期的に派手な利益を上げられなくても、長い目では結局良好な事業パフォーマンスを上げて企業価値を高め、かつ持続可能だ」という着眼点にある。

いまや、ESG投資を行う機関投資家の世界シェアは6割以上、上位50投資家でみると9割に達している。世界最大級の機関投資家であるわが国の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もESG投資を重視しており、企業社会においてはコーポレート・ガバナンス原則が、社会・環境の持続可能性に配慮した経営を推している。

翻って、トランプノミクスはどうか。パリ協定を無視するような経済政策(5月31日に離脱を正式表明)では、ESG投資家にとっては「売り」である。この政権の下では、ニューヨーク株に期待しないほうがよいだろう。

先頃、中国社会科学院からシンポジウム招聘状が届いた。同院設立45周年事業だという。登壇を依頼されたメインセッションのテーマを見て驚いた。「持続可能な発展を実現するための改革と革新」である。

サンタモニカにいるAJが電話口で吠えた。

「ニューヨークでもフロリダでもロスでも、PM2.5は現在の何倍にも跳ね上がるだろう。シカゴは亜熱帯になるかもしれない。そうでもならなきゃ、トランプは気づかない。エスケープ・フロム・アメリカかなあ」


川村雄介◎1953年、神奈川県生まれ。大和証券入社、シンジケート部長などを経て長崎大学経済学部教授に。現職は大和総研副理事長。クールジャパン機構社外取締役、南開大学客員教授を兼務。政府審議会委員も多数兼任。『最新 証券市場』など著書多数。

文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN No.35 2017年6月号(2017/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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