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2017.06.05

日本の危機管理意識が「世界の常識」からズレてる理由

(Photo by David MAREUIL/Anadolu Agency/Getty Images)


その弊害は、とくに危機対処のフェーズ(クライス・マネジメント)に発生する。

情報共有、状況認識の統一、標準化機能を備えた創意工夫、全体を俯瞰して全体を動かす意思決定ができないことだ。例えば、自然災害は内閣府が、人為災害は内閣官房が、原子力災害は原子力規制庁がそれぞれ所管している。

だが、これらが同時に起きることも十分にありえる。東日本大震災は複合ハザードが日本を同時に襲った。また、自然災害にしても、内閣府防災の中で計画・訓練・応急対応が有機的に結びついていないといった、いわゆる縦割りの問題が未だに見受けられる。

内閣府や内閣官房などは、省庁の間に落ちるような盲点を積極的に拾い、明確化しつつ整理し方向性を示すなどして、各省庁が連携して動きやすくなるような活動を強化するべきだ。危機管理の統括機関に必要な機能は、機能調整を超えた「機能統合」だ。

また、突発的なハザードに対してバイアスがかかるのは世の常だが、気候変動への適応、社会インフラの老朽化対策、シルバー津波(急速な高齢化の俗称)の衝撃、貧困対策など中長期的に日本社会を脆弱化させるハザードは、前述した法律群では対処できない。

「起きてはならない最悪の事態」は、国家としての危機管理の統括ができない体制にあり、それがひいては「起きてはならない最悪の事態」を起こす原動力になっているという自己矛盾に陥っていると思うのは私だけであろうか。国家の危機管理のグランド・デザイン欠如は、先の大戦の教訓であったはずだ。

文=蛭間芳樹

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